【 佳 作 】
仕事を通じて、かなえたい夢。私はこのテーマを見た時、はっとさせられた。今まで自分は心のどこかで、仕事に就ければもうそこがゴールで、その先なんて考えた事もなかった。このテーマについて思案していくうちに仕事に就くのはゴールであると同時に新しいスタートラインでもあったと気付いた。この時、この瞬間から、今までゴールだと思っていたものがスタートラインに変わったのだ。
私の家はみかん農家をやっている。私はそんな家の長男だ。今でこそ次男が継いでも良いだろうが、私の生まれた18年前はまだまだ農家には保守的な考えの人が多く、家は長男が継ぐものとしている家も多かった。例にもれず私の家もその考えを採用しており、幼少の頃より、自分が家を継ぐと言う考えで生活してきた。そのため、「将来の夢は何ですか」と言うような問に対してはずっと同じ解答をしてきたし、今でも変わらない。しかし、「その先」については今まであまり考えてこなかった。私と同じように家を継いだ父は毎朝5時から働きはじめ夜の7時に家に帰って来る。それが何十年もくりかえされる。そんな父の背中を毎日見ていたのだが、その姿が自分の将来の姿であることからは目をそむけていた。
時が経つのは歳を重ねるごとに速くなり、気付いたら18だ。まだ自分が仕事に就いたその先を考えていない。あるのは漠然とした「人の役にたちたい」と言う気持ちだけだ。私はこのことに付いて考えるのを止めることにした。大学に進学することにしたのだ。この「その先」を考えるのを4年後の自分に放り投げることにした。これからの4年間を通して絶対に「その先」を見つけてみせる。結局ここまで来て先送りにしてしまったのは、情けないことこの上ないが、4年後にはきっとその答えを出せると私は自分自身を信じている。
2019年、夏。私は「仕事を通じて、かなえたい夢」という問題を4年後にむかって放り投げた。あとはそれをキャッチできるように自分が走りだすだけだ。