【 佳   作 】

【テーマ:仕事を通じて、かなえたい夢】
喜ぶ顔が見たい
東北大学  計 良  衛  19歳

「インスタに載っていた語呂合わせ面白かったよ」

受験を控えた高校3年生の秋、クラスメイトのこの言葉を聞いてから私は教員という職業に興味を持つようになりました。

その数日前、

「生物の語呂合わせがあったらいいのに」

暗記量の多い生物の学習で困っていた友人のつぶやきを聞いた私は、プリントの裏に自作の語呂合わせとその解説を書いて彼に渡していました。多分その彼がインスタグラムにアップしていたのだと思います。

それ以来生物が得意だった私は語呂合わせと解説を載せたプリントをクラスメイトに配りはじめました。時に漫画を書くなどの工夫をすればその分反響があります。そして友人が楽しそうに私の作った語呂合わせを口ずさむ様子を見るのが何より嬉しかったです。私は受験そっちのけで語呂合わせの作製に取り組みました。

「もっと友人の喜ぶ顔が見たい」

尊敬する先生との出会いもあり、いつしか将来は教員になろうと決めていました。


今でこそ大学で生物化学を学ぶ私ですが、生物が得意になったきっかけはある生物の先生との出会いでした。高校3年生の時に初めて受けた先生の授業では、身近な現象を生物学の観点から解説するなど暗記が大部分を占める生物を楽しく学ぶための工夫が沢山あり、気がついたら生物が得意になっていました。先生の授業に完全に魅了された私は毎日生物室を訪ねては先生に生物を教わっていました。

大学で修士号を取得した先生は教員である反面、学問の探究者でもありました。先生の書棚には電話帳の様に分厚い生物学の専門書が所狭しと並んでいました。「一学習者」として生徒に対して模範を示している先生の様子を見て私も刺激された覚えがあります。その様な先生の話を聞いているうちに私も先生と同じ分野を学びたいと思い現在の専攻を選びました。

爆笑と涙と深いうなずきで教室満たす一方で部活動の顧問もされるなど多忙を極める先生の机の脇にはいつも飲み終えたブラックコーヒーの缶が山積みにされていました。ただ、忙しい中でも楽しそうに仕事をされている先生の姿が印象的でした。


私が教壇に立つ頃には既存の教育方法に加えeラーニングを始めとした新たな学習スタイルが教育現場に浸透していると思います。教員の存在意義が問われる中で、私が意識したいことが「面白く踏み込んだ授業」です。eラーニングで有名予備校講師の授業を受けられる現代の学生が敢えて学校へ登校しわかりやすさの点で劣る私の授業を選ぶためには、圧倒的な面白さが必要です。テレビの画面で落語を見るのと実際に劇場に足を運んで観るのでは臨場感が大きく異なる様に、目の前で行うライブ授業はeラーニングにはない臨場感がありその分楽しむことができるはずです。その場にいるから楽しめる、ならば生徒は私の

授業を落語のようなエンターテイメントとして捉えてくれるのではないでしょうか。自作の語呂合わせを用いるなどの工夫を凝らした授業を目指したいです。

また、得てしてeラーニングの授業は短時間で効率よく学ぶことに重点が置かれているため、表面的な内容しか扱わない場合が多いのが現状です。そこで私は大学での研究をいかしてより深い学習内容まで踏み込んだ授業を目指していきたいと思います。そして生徒の興味関心にとことん応えていきたいです。


「もっと友人の喜ぶ顔が見たい」

高校生の時の想いは今も変わっていません。対象が友人から生徒に変り、そして私の立場も変わりますがこの想いを忘れないようにしたいです。一人でも多くの生徒に私の授業そして生物を楽しんでもらいたい。私の恩師のように日々工夫の努力を続け、そして「一学習者」として常に生物学の最先端にも触れていたいと思います。残された大学生活は僅かですが、「面白く踏み込んだ授業」に向けて専攻分野の研究は勿論、今から授業や教え方の工夫を考えていきたいです。

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