【 佳 作 】
「オークン!」
アジアの発展途上国の1つ、カンボジア。アンコールワットなどの世界遺産があり、近年日本人観光客が増えている。冒頭で述べた「オークン」とは、「ありがとう」を意味する現地の言葉だ。所属していた国際支援サークルの活動として、大学3年生の春休み、僕はそんなカンボジアを訪れた。
カンボジアで現地の方と話したとき、唯一通じた言葉が「オークン」だった。道を尋ねても、自己紹介をしても、まったく聞き取ってもらえなかったのに、「ありがとう」だけはハッキリ理解してくれることが、僕には不思議だった。
そして、そんな「オークン」が役立つときが、令和時代を迎えたばかりの日本に迫っている。
先日ネットでこんなニュースが流れた。
『法務省は2019年4月、外国人労働者の受け入れを拡大する新制度で、カンボジア国籍の20代女性2人に対し、「特定技能1号」への移行を許可する通知を出した』
少子高齢化が進む日本。人手不足で困っている職業を中心に、外国人労働者の受け入れをすることが正式に決まっている。その影響から流れたニュースだった。
さて話は変わるが、僕は現在大学4年生で就職活動をしている。僕が志望する職業はたった一つ、「介護士」だ。
大学2年次から介護施設でアルバイトをしていた僕は、1年半以上の業務経験の中で、介護職の「良い部分・悪い部分」を見てきた。良い部分は、思った以上に楽しいところ。高齢者の方との話はすごく面白いし、何よりたくさん「ありがとう」と言われる。悪い部分は、生活がマンネリ化するところ。狭くて閉塞的な施設は変化に乏しく、人手不足ゆえにサービスの質が低下しがちなのである。
そしてそんな介護職を志望する僕は、外国人の受け入れが、介護職の悪い部分を改善する手立てになると確信している。そう考える根拠は、カンボジアで現地の方と触れ合った僕だからこそよく分かる。
「外国人との共存は難しい」「犯罪率が増えるかも……」
外国人受け入れに対して、否定的意見として多いものを挙げた。新たな試みに対して、ネガティブな意見が多いことを悪いとは思わない。でもそれらの否定的意見を述べる人が、もしカンボジアなどに行ったことがないのならば、とても残念だし、ナンセンスだと感じる。
カンボジアに行ったことがあり、人手不足のド真ん中である介護職に携わった僕からすれば、「そんなに心配する必要は無いのに」という意見に終始してしまう。なぜなら、カンボジアの人たちはいつも笑っていたからだ。見ず知らずの僕を受け入れ、わざわざメモ帳を取り出してまで美味しいご飯屋さんを教えてくれたり、写真を撮ろうと人懐っこく話しかけてきたり……。最後に「オークン」とお礼を言えば、これ以上ない笑顔を返してくれる。日本人よりよほど優しいし、人間味があったと心から思う。
優しくて、一生懸命で、笑顔の多いカンボジア人が日本に来れば、閉塞的でつまらないことが多い介護施設の高齢者たちは、絶対に喜ぶ。これが介護の悪い部分を改善してくれる、シンプルな根拠だ。
新制度に対して否定的な意見を言う人、何を準備すれば良いのかわからない人、全ての人がやるべきことはたった一つ。「感謝の言葉を伝える練習」だ。その言葉を素直に伝えられれば、国籍など関係なく、最高に楽しい世の中が造れる。今回は折角なので、カンボジアの言語でその言葉を述べ、終わりとさせていただこう。
「オークン!」