【 佳   作 】

【テーマ:仕事探しを通じて気づいたこと】
天国への手紙
関西外国語大学  藤 岡 勇 気  22歳

人生は幸せの連続ではない。時として心に深く傷を残す出来事を経験する。

私の恩師は私が中学生の時に、事故で亡くなった。その恩師とは私の空手の師範である。


幼少期から親に無理やり空手に連れて行かれていた私にとって、空手は心から習いたいと思えるものではなかった。正直、親は私の性格が恥ずかしがり屋で男子としては失格である考え、私を空手の世界に入れたのだろう。毎日の地道な体力づくりや過酷な練習が幼い私にとっては、嫌で嫌で仕方なかった。


もちろん空手の師範も私には厳しいことも多く、正直とてもしんどかった。

しかし、現在、大学3年生になり就職活動のために自己分析とういう名目で自分の歴史を振り返ると、様々な発見がある。


あんなにも厳しかった空手の師範が私の人生の恩師であると気づいたのである。

そしてそのことに気づいた今日、天国の師範に手紙を残したいという気持ちがこみ上げてきたのである。



拝啓


早いもので大学卒業まであと1年になりました。

私は、現在、オランダの大学に留学しており2ヶ月後からは海外にある商社でのインターンシップも決定しています。その一方で就職活動の準備も着々と進めています。

私があなたに出会った頃には予想もしていなかった人生になっています。


正直に言わせてください。


私は、あなたの恩恵に全く気づけていませんでした。


就職活動の自己分析の中で私の歴史を振り返ると、必ずあなたの姿が心に浮かびます。

その答えは明確です。なぜなら、就職活動のために自分を振り返る中で見えてくる私の強みや性格はすべて、あなたが私に教えてくれたものだから。


人への優しさ、精神力、真面目さ、謙虚さなどの自分の性格、強みはすべてあなたが私に授けてくれたものでした。

正直、家族以外で思いやりを持って私に厳しくしてくれた方はあなた以外に見つかりません。


思いやりを伴った厳しさが私のすべての土台を作り上げていました。


社会人になる前に、あなたの恩恵に気づくことができてよかったです。


あなたのような強く、心の奥に優しさを持った師範に出会えたことを誇りに思います。

天国でも幸せに暮らしていることを願っています。

あなたが私に授けてくださった、人への優しさ、精神力を抱いてこれからの人生も歩んでいきます。


最後に一つだけ聞かせてください。


私はあなたが望んだような人間になれていますか。


あなたと出会えて、ほんとうによかった。

ほんとうに有難うございました。


敬具



就職活動とは単なる仕事探しではない。

自分を見つめ直し、人生の中で見逃していた本当に大切なものを見つける作業である。

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