【 佳   作 】

【テーマ:仕事探しを通じて気づいたこと】
就活ゲーム
神奈川県  鴎 丸かもめまる かな子  23歳

カナコは激怒した。


まるで太宰治の「走れメロス」の主人公メロスと同じぐらいに、私は激怒している。それは就職活動というものである。就職活動とは、その名の通り就職するためにあらゆるネットワークを駆使して情報を得て、真っ黒のスーツを身にまとい、北海道から沖縄まで駆け巡るのだ。

就職活動をするにあたって、まず行うものはエントリーシートだ。エントリーシートでは名前、性別、最終学歴、学部、住所、電話番号などプライバシーをあらゆる企業や就職サイトに登録してゆく。ここで無事にエントリーできれば、企業側から「次のステップに進んでいただきたいと思い・・・」という、あたかも「あなたに興味があるんです、私たちは」という文章が、エントリーした3分後にはメールで送られてくる。

次のステップとは企業によって異なるが、企業説明会やグループディスカッション、適性検査が多い。企業説明会では人事部がビジョンや事業内容を延々と話し続けていく。大学生に親しみを持たせるために「僕は学生時代にラグビーをしていて、全くこの業界のことは考えていなかったんですけれど・・・」とフレンドリーに、「私たちは君たちのようだったけれど、この会社に出会って何かに目覚めました。」と、香ばしい香りを漂わせる。

グループディスカッションは就活生がグループになって企業のお題に沿って話し合う。企業側は彼らのリーダーシップや協調性を見ていくのだ。就活生は初対面の就活生、すなわちライバルと協力して話し合っていかなくてはならない。普段は敵だがこの時ばかりは仲間。なんだか少年漫画に出てきそうな話である。

適性検査はパソコンを使うテストである。有名どころはSPIであろうか。内容は2種類あり、国語や算数などの基礎能力を測る能力検査や、性格検査という自身の日頃の考えや行動についての質問に「当てはまる」「当てはまらない」というように答えていく検査もある。この適性検査は自宅でできるものや、決められた会場に行って試験を受けるケースもあり、自分の結果は分からないままに企業へ自動的に送られる。

このようなステップを超えていけば、お待ちかねの面接が待っている。人事部から社長など、面接を複数回行っていく。最終面接で通ればめでたく内定。落ちればはじめからやり直し。何かに似ていると思わないだろうか。

就職活動はまるでポケットモンスター(以下ポケモン)のゲームである。主人公は自分で、他のポケモントレーナー(就活生)と戦いながらジムバッジ(選考通過の連絡)を獲り、ポケモンリーグ(面接)へ出場する。ポケモンリーグには四天王(新人面接官、ベテラン人事部、課長、部長)を破り、チャンピオン(社長)と戦う。チャンピオンに勝つことができれば、晴れて殿堂入り(内定)である。ポケモンGOよりもリアルなポケモンゲームを楽しめるといってもいい。

ポケモンゲームには攻略本がある。読んで確実にゲームを進めることができるもので、攻略本を使ってゲームをする人、もしくは読まずに自力で進める人に分かれる。読み切った攻略本を貸す人もいる。就職活動も同様にSPIや面接の攻略本が存在するのだ。攻略本を読み込んで受けた適性検査は、果たして適正に適性を測れているのだろうか。


就職活動は本当に不思議なイベントである。多くの大学生は、高い授業料を払っておきながら、週に1度も学校へ行かず、「御社」のために47都道府県を駆けていく。大学は、就職活動のためにあるものではない。学生という枠の中で、様々な人と出会い、学び、考えたり、自由に表現のできる特別な時間ではないだろうか。

最後に、メロスの言葉を借りて、こう叫びたい。

さあ、パンプスを脱げ。ネクタイを取れ。いまはただその一言だ。走れ!若者。

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