【 佳 作 】
今、私は大学3年生から個人で続けているお仕事があります。
それは服や雑貨の生地に使われる絵を描くことです。昔の言い方をすると図案家、今はテキスタイルデザイナーとも呼ばれています。主に京都の着物の図案制作のための職業ですが、今は着物や図案を描く人そのものも少なくなり、2〜4人体制で制作しています。さらに制作上のコミュニケーションはメールでのやりとりなので実質は一人での制作です。なので常に体調管理やスケジュール管理、孤独との戦いでもありますが自分の思い描く柄を自由に描くことができる環境なのでとてもやりがいを感じています。
しかし2年間続けていくうちに、お金だけを目的とした制作に意識が集中してしまっているような気がしてきました。初めの頃は「大好きな絵を描く事が続けられる!」、「カラフルで可愛い柄でみんなを楽しませたい。」という気持ちで挑んでいたのが『お金になるから』としか考えられなくなっている自分に気づいて描くことを心から楽しんでいません。そんな自分に嫌気がさして一人で抱え込んでしまいました。
そんな中、休日にクライアントさんから自分のデザインした柄のアロハシャツを芸能人の方が着てテレビに出ていらっしゃった事を写真を送って教えて頂きました。その時、初めて自分の仕事の成果を実際に見ることになり、「私が考えて描いた柄を着てくださっている!」ととても感動しました。また、このように何処かで自分の柄でものづくりをしている方や使用して頂いている方がいると思うと改めて自分の仕事の軸を振り返ることが出来ました。
写真を送ってくださったクライアントさんもメールのみのやりとりなので、本当は柄を売りに営業へ出掛けながらの仕事なのでいつもお世話になっている事も忘れかけており、お金にしか視点を集中していなかったのが一気に人とのつながりや本来の絵作りの面白さを思い出すきっかけになりました。今もその事を教えていただいたクライアントさんには感謝しており、共に仕事をしております。
仕事を通じて叶えたい事は自分も楽しみながら制作し、出来上がった図案を誰かが服や雑貨の商品作り、その製品を誰かが使って生活を楽しんでいただく。そんなワクワクの循環を作っていく事です。