【 佳 作 】
私は、今まで建設業と無縁の人生を送ってきた。学校でも建設業に関することを学んだことはない。そんな私がなぜ現在電気工事会社に勤めているかというと、実家が同じように電気工事会社を営んでいるからだ。
今、同業者で修業をさせていただいている。しかし学生時代は、将来自分が会社を継いで建設業に携わろうとは全く考えていなかった。建設業といえば3K(きつい・汚い・危険)というイメージが先行してしまい、職業を選ぶ際の選択肢にも無かった。私にとっては、爽やかにスーツを着て働く、いわゆるホワイトカラーの職の方が魅力的に見えた。実際に今の職に就く前は、スーツを着て仕事をしていた。
今でもこの仕事がかっこいいとは正直思っていないが、以前のようにホワイトカラーというこだわりは無くなった。僅かな社会人生活でも悩み、葛藤することが多々あった。ある日ふと「仕事に対して何を1番に求めているのだろうか」と考えていると「家族を幸せにできるか」ということではないかと気づいた。どの職業でもこの目標は達成できるが、私にとっては、この職に就いていることが最良の選択であるのではないかと思っている。また、今日では中小企業の廃業が増えている。その原因の多くが後継者不足である。私が後を継がなければ家族だけでなく、従業員の方々やその家族にも迷惑がかかる。今では、この職に就いたことが『私の使命だ』と思っている。
建設業で働いてみて、分かったことがある。それは、一人では絶対にできない職業であるということだ。建設業といってもそこには様々な職種がある。設計、建築、電工、設備など数えきれないほど存在する。更にその関係は建設業特有の多層構造となっており、元請け、下請けなど一般の人には聞き慣れない言葉が多い。各現場で一緒に仕事をする人たちは、当然現場によって違うのでコミュニケーションを密に取り、自分たちの仕事を円滑に進めることが重要である。もちろん、うまくいかないことや大変な思いをすることはある。しかし、同じ現場で汗を流した人たちから「また一緒に仕事をしよう」と言ってもらえると、嬉しくなり『次もがんばろう』と思うようになった。こうして現場では様々な出会いがあるということを学んだ。また、形のないものを一から作りあげて完成させると、表現のしようのない充実感や達成感を得ることができる。工事が終わってからも、近くを通るたびにその建物に携われたことを誇りに思うようになった。
建設業は、人々の生活に絶対必要な職業だと私は思う。普段誰もが何気なく、住宅や店舗などの施設で生活をしている。その全てに建設業が関わっている。それは日本だけでなく全世界共通であり、建設業なくしてこの世界は成り立たないのではないだろうか。近年、産業の高度化、AIの進歩により、今ある仕事でも、今後無くなる仕事が多くあるといわれている。しかし、建設は大昔から存在し、伝統のある職種である。人にしかできない、人だからできる部分が多く、これからも無くなることのない職業だと思う。この業界で生きていく中で、若者が建設業へ興味を持ってくれるように多くの建物に携わり、そして共に未来を創造するような仲間を増やし、より魅力的な業界にしていくのが今の私の目標である。