【 佳   作 】

【テーマ:仕事を通じて、かなえたい夢】
人にやさしくあれ
大阪府  ひつじせんせい  27歳

私は、仕事を通じて相手の気持ちに寄り添ったり、目の前で困っている人にやさしくしたりできる子どもたちを育てたい。これが、働くうちに明確になってきた仕事を通じてかなえたい夢である。

小学校教員として働き始めてあっという間に4年の月日が流れ、今日も子どもたちと共に笑い、共に学び、時にはお互いに意見を伝えあいながら、教師としての経験を積んでいる。大学を卒業し、教師になりたての頃は、いかに子どもたちに分かりやすく勉強を教えるか、いかに子どもたちに好かれるか、そればかりを意識して毎日を過ごしていた。しかし、日々子どもたちと関わっているうちに私の考えは少しずつ変わっていった。大人でもそうだが、誰一人として同じ人間はいない。性格は似ていても、家庭環境や今まで育っていた環境は一人ひとり異なるので、抱えているものも違う。勉強は得意だが運動が苦手、それとは反対に、運動は得意だが勉強はあまり得意でないなど、それぞれの、よさがあり、不得意なこともある。

大人の私にも、子どもたちと同じように、幼いころから得意でないことがある。それは、注射である。2年前に入院をして1週間点滴をつないだまま、そして毎朝採血をする生活を送っても克服できなかった。毎年、11月にある職員検診が近づくと、担任をしている子どもたちにそっと、告白する。『このクラスだけの話だけど、先生には頑張っても勝てない苦手なことがあります。子どもみたいと笑うかもしれませんが、注射です。子どものころから注射を打つと心臓がバクバク、手がピリピリして倒れそうになります。でも、毎年注射を打っています。みなさんは、この話を聞いて、変だなと笑いますか。』この話をすると、最初はくすくす笑いかけていた子も途中から神妙な顔をして、私の目をじっと見ている。私の問いかけに、『逃げずに注射打ってるんやからいいやん。』『私も注射得意やないで。』と私を励ましてくれた。私は、1年前子どもたちの中で、次のような意見が出たのを忘れない。『みんなと一緒じゃなくてもいいやん。一人ひとり違うし。みんないろんな得意なこともあるし面白いやん。』普段、違うという言葉はマイナスイメージで使われるが、彼女はその違いが、多様性をそれぞれが持ち合わせていることがよい、面白いといったのである。そんな雰囲気の中では、誰かが得意でないことを口にしても笑わないし、得意、不得意をお互いに理解し合い、助け合ったり、苦手を克服した時、自分のことのように喜ぶ子どもたちの笑顔がたくさん見られる。

そんな告白をした私のもとには毎年、職員検診の後に私の秘密を知っている子どもたちがこそっと尋ねにくる。『先生、今年は注射どうやった?泣かんかった?』『先生、よく頑張りました。』他の先生には、絶対に秘密にしてほしいようなやり取りが繰り広げられるのである。こんなやり取りをしているうちに、相手の得意、不得意の両方を理解して、気持ちに寄り添える優しい子どもたちに育てたいと思うようになった。そのために次の2点を心掛けている。1つ目としては、毎日一人一人の気持ちを1対1で話をしながら聞く時間を設けるとともに、いい行動をしている子どもを見かけたら個別に声をかけたり、即座に周りに聞こえるようにおおげさに褒めたりしている。2つ目としては、子どもが何かしてくれたときにその子の名前を呼びながら、目を見てありがとうと伝えるようにしている。この2点を心掛けているうちに、私と同じように行動するようになり、お互いに得意なこと、得意でないことを認め合いながら先生にあまり頼らず、自分たちで考えながら助け合う子どもたちに成長してきている。

どんな環境においても、目の前の困っている人の気持ちを考え心配できる子どもたちに育てるために日々気持ちに寄り添い、一人一人と向き合っていきたい。

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