【 佳 作 】
『なぜ、そんなにモチベーション高く仕事しているの?』
会議終わり、同僚からの一言だ。「楽しいからです。」と答えながら、心の中で理由をかみしめた。僕は今、働くことがすごく楽しい。会社名を名乗ること、仕事について語ること、そんな瞬間が全て楽しい。誰もが知っている上場企業で働いているから。いや、違う。自分がしたいことが出来る事や自分に適した環境で働けているから、わくわくしながら働けている。
もともと僕は、仕事をモチベーション高く行っていなかった。目の前の仕事をやりたいことだと何度も言い聞かせ仕事をしていた。それは前職での経験、特に自分の特性に原因があった。
僕は発達障害の当事者である。大人になってから気付いた。マルチタスクを行うことができない、コミュニケーションが苦手など、仕事をするうえで問題になりがちな障害だ。当時、僕は立て続けにミスを起こし、仕事がゼロとなっていた。仕事に行ってもコピーやファイル整理のみ。それでも僕の「自信満々である」という発達障害の特性により、仕事がゼロの状態にも関わらず『自分は仕事が出来る』と思い込んでいた。そのため、上司や同僚からのアドバイスには一切、耳を傾けなかった。僕は仕事が出来る人材だと思っていたからだ。しかし、1人の上司との出会いで考え方が変わった。その上司は僕に発達障害だと指摘をしてくれ、一緒に対策も考えてくれたのだ。そのおかげで、自信満々で仕事ができると思い込み、アドバイスを聞かないことはおかしいと少しずつ受け入れるようになった。他の特性にも対策を行い、業務に取り組んだ。ただ、取り組みたい仕事は他にあると考え、転職を決意。周りからの強い反対を押し切り、次の就職先を決めないまま、会社を退職した。
退職後、僕は発達障害者向けの就労移行支援施設に通った。施設では転職活動するにあたり、特性理解を行い、今後のキャリアプランを考えた。自分に向き合ってくれるスタッフも沢山いて、キャリアを考えていくうえで整理ができた。自分の大切にしている価値観から、人生を通して何をしたいかを考えた。行きついた答えが『好きな商品を広める仕事』。そして、特性理解では自分の苦手なことを考えた。僕はマルチタスクがとても苦手で電話対応をしながら他の業務を行うことが難しかった。その環境の職場は必ず避けなければならない。仕事選びの軸は、苦手な環境ではないこと、自分のやりたいことが出来ることとなった。軸をぶらさず、100社以上の求人を見た。そんな中、第一志望の会社が今所属している会社だ。新卒の時に就職活動が全くうまくいかなかった僕が、今回は第1志望の会社に就職することができた。やりたいことを真剣に考え、その思いを伝えた結果だと思う。転職して半年間立った今、業務を少しずつ任せてもらえるようになってきた。初心を忘れずに取り組んでいきたい。
好きな商品を広めていける仕事。そして、電話対応が少なく特性が出にくい環境。それが、モチベーションが高い理由である。仕事探しをすることで、特性を理解し、働く上で大切にしたい軸を見つけた。さあ、あとは自分の出来ることで活躍していくだけだ。わくわくする。