【 佳   作 】

【テーマ:仕事探しを通じて気づいたこと】
仕事は、苦手なものから探す
愛知県  南 谷 有 美  30歳

私は今、30歳。

ある人から見ると、若者。しかし、またある人から見ると、もう立派な大人。

若者でも大人でもない、中途半端な位置にいる私。その狭間にいる今だからこそ言えること、それをお話ししていきたいと思います。


私は、小さな頃から保育士になることが夢でした。中学・高校とそれなりに勉強をして、保育士の資格がとれる短期大学に入学しました。そして、短大卒業後は、地元の公立保育園の先生として就職、まさに思い描いていた将来を実現することができました。

保育士の仕事は大変な面もありましたがとても充実しており、私はこの仕事が大好きでした。しかし、25歳を目前にしたとき、特に理由はないのですがふと不安な思いに襲われました。

「私このままでいいのかな」

もし何かに挑戦するんだったら今しかないと思い、その当時興味を持っていたカメラマンになるべく、名古屋のフォトスタジオに就職しました。そのスタジオで1年修行をさせてもらい、翌年に独立。26歳でフリーランスのカメラマンになりました。


カメラマンとしての仕事が安定してきた頃、私の周りは空前の出産ラッシュで、元保育士という立場から子育てに関する悩み相談もよく受けていました。中でも待機児童の問題が深刻で、0歳児保育の必要性を感じていました。

「保育園がないなら、作ればいい」

今でもなぜその発想に至ったのか疑問ですが、その時私はそのように思いました。とはいっても、作り方はもちろん知らないし、周りに保育園を作ったという人もいなかったので、私は市役所に足を運びました。最初は冗談だと思われていたようですが、何度も市役所を訪れるということが功を奏し、真剣に話して頂けるようになりました。平成29年8月に認可外保育施設を設立しました。


「28歳で園長になった私、現在は何をしているのでしょうか。」

「実はまた、フリーランスに戻りました。」


初めは苦戦していた経営ですが、徐々に子どもの数が増え、それとともに保育士の数も増えてきました。私が現場にいなくてもまわるようになったため、平成30年5月保育園をお譲りし、再びフリーランスに戻りました。

それから私は、もっと色々な場所を見たいと思い旅をすることにしました。2ヶ月ごとに拠点を移動するという生活をしています。その時から、写真に合わせて文章を書くという仕事もするようになり、現在はカメラマン・ライターとして各地を巡っています。


色々な職を経験しているためか、仕事の探し方について聞かれることが多々あります。その際に、「私は、好きなことを仕事にしている」とお話していたのですが、実はその逆だったということを最近感じるようになりました。


例えば、私の場合だと

保育士になったのは、親にうまく甘えることができなかったから

(だから、子どもの想いを汲み取る保育士になりたいと思った)

カメラマンになったのは、自分の顔が嫌いだったから

(だから、人や物が輝く瞬間を探すことが得意になった)

ライターになったのは、話すという表現方法が苦手だったから

(だから、書くという表現方法を身につけた)


足りない何かを埋めるため、苦手なものを補うために、私は仕事をしているのではないかと、ふと思いました。


これから仕事を探す人に伝えたいこと、それは、「好きなものからではなく、苦手なものから探すという方法もある」ということです。私もそうですが、好きな食べ物を聞かれると迷ってしまいますが、苦手な食べ物を聞かれたら「パイナップル」と即答します。苦手なものというのは、答えがはっきりしていることが多いのです。


様々な職業が生まれ、様々な職業が消えていくという現代。本当にすごい時代に生まれてきたなと感じています。若者と大人との間にいる今だからこそ言える言葉。少しでも多くの人に届きますように。

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