【 奨 励 賞 】

【テーマ:仕事を通じて、かなえたい夢】
祖父のように
国際医療福祉大学  及 川 晴 賀  19歳

私が尊敬する人は、同居している母型の祖父だ。祖父は、自営業を営んでいる。祖父は毎日、誰よりも早く起き、仕事の準備をする。仕事が終わって家に帰ってくるのはいつも遅い時間だ。夜の遅い時間でも電話がかかってくると現場に向かっていく。ある時友人に、「この間、あなたのおじいちゃんに仕事に来てもらった」と感謝されたことがあった。そんな、仕事に一生懸命で地域に貢献している祖父の姿は、私にとって大きな存在である。

私の地元は、山間部にあり自然豊かだ。川ではアユやヤマメがとれ、よく魚を釣っている人がいる。地域の人はみんないいひとたちばかりで優しい。近所の道で会うと、「元気にしてらが?」などと声を掛けてきてくれる。また、野菜や山菜を物々交換をしている。地元でとれた野菜や山菜はとても美味しい。同級生は保育園からの付き合いで、中には高校まで同じクラスの人もいて、みんな本当に仲がいい。学校行事以外でも、友人の家に集まりバーベキューをしたり、川遊びをしたりした。自然に恵まれていいところがたくさんある一方で、大変なこともある。1つは、少子高齢化が進み、高齢者が増え、若い人たちが少なくなっていることだ。小中学校では、クラスの人数が一桁。また、高校を卒業し、県外に進学や就職したままで、地元に帰ってくる人はお手も少ない。2つ目は、交通機関だ。近くにお店がないため、食材や生活に必要なものを買いに行くとしても、車が必要不可欠である。他の交通機関を利用したらいいと思うかもしれないが、バスは通っていないし、電車は数時間に1本という頻度なので行きたいときに行けるというわけではない。高齢者の方々からしてみると、とても不便だと思う。地元の大変さを上げるときりがなく、実際私も、高校を卒業数までは、早く地元を出たいと思っていた。しかし今、自宅を出て、県外に進学してふと思うのは、今まで気づかなかった地元の良さであったり、あるいは、実はもっと地元を住みよい地域に変えられるのではないかという気づきである。

私の祖父は小柄で、私と話をするときは、170センチをこえる私をいつも見上げている。小柄ではあるが運動神経がよく、また、以前はよくマラソンをしていた。そんな祖父も70歳を超え、だんだん体が言うことを聞かなくなってきたと言っていた。私は祖父に長生きしてもらい、これからも元気でいてほしい。祖父だけでなく、地域の人たちにも元気であってほしい。そのためには、医療環境を充実させることができたらいいと思う。例えば、地域の診療所と病院の連携による、患者さんの今までの診療記録や情報の共有化の実現だ。また、医療機関への交通システムが不十分だからこそ、専用バスの開通や、病院に行くことが困難な高齢者のための訪問診療なども必要であろう。これにより、患者1人1人にあった診断や治療が実現でき、安心できる医療を提供することができると思う。

私は将来、診療情報管理士として医療に携わっていきたいと思っている。この職業は医師のように直接患者と接して、病気やケガを診ることができるわけではない。だが、医師やほかの医療従事者にはできない、情報を記録し、その情報をもとに医療費のことを考慮し、診療の円滑化を図ることができる。そのような、直接医療従事者とは異なる視点から、医療を支える存在になりたい。

県外に進学した今、地元に対する見方が大きく変わった。私は将来、地元の医療機関に就職し、地域に貢献するという選択肢もありだと考えるようになった。もしそれができたら大学に進学するまでの18年間お世話になった分、地元に恩返しがしたいと思う。そして、働きは、祖父のように地域のために働き、誰からも信頼されるような人になりたい。

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