【 奨 励 賞 】
私が今の仕事に就こうと思ったきっかけは、8年前に起きた東日本大震災でした。あの光景をテレビで見た時の衝撃は今でも鮮明に覚えています。その時、小学5年生だった私は、同年の3月末に、警察官だった大好きな祖父が闘病の末に亡くなった事も重なり、目の前で起きる苦しさと向き合っていました。
テレビで毎日のように見る被災者の人々のライフラインが止まった環境に、「私も何か手助けできる事はないのか」と思い巡らせていました。そんな時、電気工事を復旧させ、街に光がさし、多くの方々が泣いて喜んでいる姿を見て、電気工事士になりたいと思いました。
高校では電気科を選び、この仕事に就き1年2ヶ月が過ぎました。入社した頃は、とにかく初めての体験ばかりで、工具の名称、その目的を覚える事に必死で、今自分が何の工事をしているのかさえも理解できず、ただただ先輩の後をついて行くだけでした。泥だらけになる毎日。そして、月日が経つと共に、仕事をしていくということは、自分自身の弱点とも向き合う事なんだと気付かされる日々でした。上手にこなしたいと思えば思う程、うまく作業が出来ず、また自分の不器用さにもはがゆく感じ、自信を無くす日々と向き合いました。先輩のように的確にきれいに時間内に作業をしたいと思えば思う程、焦る自分とも向き合いました。先輩に迷惑をかけ、怒られ、注意を受ける事もたくさんあり、毎日悩む続けました。
ある日、自分も早く先輩のように的確に責任を持って作業し、期待に応えたいという気持ちの焦から、うまくいかないのだと気付きました。自分自身でまず、自分の弱点、不器用な所を認め、そしてその弱さをそのままにするのではなく、不得意な所は何度も何度も練習をして、分からないことは恥かしいと思わず先輩や上司に聞き、そして注意された事は再度確認をすることが大切なのだと思います。また、苦しい時には、先輩・上司に助けを求める事が大事なことだとも考えました。
母から「最初から何でも上手にできないのが当たり前。誰も最初から上手にできたら苦労はせんよ」と言われ、この言葉が胸に響きました。そう思えたら仕事をしていく上で、自分の弱点を見極め、そこを改善していけば良いのだと背中を押された気がしました。また、自分だけではなく誰もが思うことだと知りました。
働くという事は、簡単なことではありません。現場に立つ人間ならばミスが起きない様に気を付けますし、また一つのミスが大きな事故へとつながります。誰もが最初はつまずいたり、時として投げ出したくなる事もあると思います。しかし、何でも話せる同期、いつも相談にのってくださる上司、仕事の時は厳しくてもオフの時は楽しく笑顔の先輩、そして誰よりも気にかけ心配してくれる両親。皆に支えられ私自身が働いていけるのだと思います。また仕事とは、お客様があってのことです。お客様の信頼に応える事ができるように日々の努力を惜しまず、仕事の一つ一つを丁寧に行い、日々の現場を大切にしていこうと思います。
春から後輩の仲間も増えました。私のように、自分の弱点に気づき立ち止まる事があるかもしれません。そんな時は、私も何かの役に立てれる存在でありたいと思います。仕事で覚えなければいけない事がいっぱいあります。これから先も様々な困難にぶつかるかもしれません。しかし、沢山の経験を積み、自分自身と向き合い、しっかりと前を向き、立ち止まった時も一人じゃない事、支えてくれる仲間がいる事を胸に、感謝の気持ちを忘れず努力をしていきます。
あの時、あの大きな震災の中で、多くの人々のライフラインを繋げた電気工事士のように、私もしっかりとした知識、技術を覚え、安全、安心な暮らしを多くの方々に提供できるよう、先輩方の技術を学び、自分らしさも忘れず、前に進んでいきたいと思います。