【 奨 励 賞 】
私には夢がある。それは命の格差をなくしたいという夢だ。現代では、生まれによって、医療や教育、社会環境など様々な格差が存在する。そのような格差をなくすことに貢献したい。そう考えたきっかけは、小学生の頃に観たテレビ番組「データマップ 63億人の地図 いのちの地図」だ。
「いのちの地図」とは、世界中の国々の平均寿命をデータとして、世界地図に描いたものだ。当時の日本は、平均寿命の長さが世界一で平均寿命は80歳を超えていた。一方で、西アフリカの小国シエラレオネの平均寿命は30代、最も平均寿命が短い国の一つであった。私はこのシエラレオネに興味を持ち、自由研究で、なぜシエラレオネは平均寿命が短いのかという問いに対して調べた。そこで分かったのは、産出する金属資源を巡る内戦と荒廃という歴史。また内戦後も、未発達な医療設備や経済状況の遅れ、行き届かない教育など、様々な要因が重なり、格差は依然として存在するという実態だった。
この問題を解消するために何ができるのかと考えた時、中学生の私にはフェアトレード商品を買うといった形の支援しかできることがなかった。しないよりはする方が良い。けれども、成長したらもっと別の形での支援がしたい。できれば、お金を送るなどといった経済的な支援ではなく、医療や教育の整備といったより現地で関わる支援がしたいと思うようになった。
私は、高校、大学と進むにつれ、理科の面白さに取りつかれ、科学と理科教育を学んできた。そして来春から、青年海外協力隊として二年間途上国に行く予定だ。現地では、理科教員として子ども達の教育に関わる。協力隊の理科教育では、生徒自身が主体的に考え行動し自ら学びを振り返るような生徒主体の授業の実現を目指している。
途上国では多くの場合、女性や子どもの人権が軽視されている。子ども達は理科教育を通して、他者と対話し他者に学び主体的に考え行動することを学ぶ。同時に、それは自分自身も、互いの人権を尊重し共に学び、実践する人間に成長することに繋がる。そのような教育実践によって、生徒は女性や子どもの人権を尊重し、生きる権利が等しく保障される次世代の地域・国家の実現を目指していく。そのような人間を育成する教育に携わることができる。
協力隊の任期はたったの2年だ。けれども理科教育を通して子ども達の成長に関われること、そして私自身が現地の環境に身を置くことで、生徒達が将来的に克服しなければならない課題と社会・地域の未来を担う子ども達を育成する教育のあり方を考えることができる。そして、それは私の命の格差をなくしたいという夢につながる、そう信じて一歩一歩進んでいきたい。