【 奨 励 賞 】
私が建設業である今の職に就いて1年と2か月が経過しているが、ふと学生時代、卒業研究に没頭していた頃を思い返すことがある。私の研究室では、レーザー光を用いて物体の表面形状を計測するという研究を行っており、多くの実験や報告書の作成、また報告会など、会社の業務をしているような経験をさせていただいた。その経験があったことにより、今の職に就いても環境の変化に困惑することもなく、順応することができたと思える。就職をして働き始める時の心情や考えは、人それぞれであるが、私の場合は今まで通り毎日出社(通学)し、目の前の業務(研究)に打ち込むのみであった。
そのような気持ちを持ちながら、新入社員の現場研修を終え、現場管理係へ配属され現場に常駐することになった。そこで、目の前の建物が少しずつ完成に近づいていくのを目の当たりにし、また、周りの進捗に合わせて自社の工事を管理することにより、その建物の建造に関われていることを誇りに思うようになった。仕事にやり甲斐を感じることができたのを覚えている。その後、常駐していた現場の竣工を見据えながら業務をしていた頃、私は営業係へ職種転換することになった。
毎日現場へ行き、基礎的な知識や業務を覚え、現場管理への理解が進んできていたということもあり、ここで私は就職して初めて環境の変化に困惑した。営業職には興味を持ちつつ、「いずれはやってみたい」と思っていたが、現場管理係としても未熟であったこともあり、「私に営業が務まるのだろうか」と考え、それが悩みとなった。しかし、就職当初あまりなかった感情、「これが就職するときの緊張感であるのか」と思うと、新たなるスタートに好奇心と向上心が溢れ、改めて前向きに業務を行えるようになっていった。今では多くのお客様とお会いし、お話しすることが大変楽しみであり、日々自らの成長を実感しながら仕事へのやり甲斐を感じている。
学生時代、「何事も楽しみながらやらないと潰れてしまうよ」と教授によく言われていた。この言葉の真意は当時あまり理解できていなかったように思う。しかし、働き始めてからそれが少しずつ理解できるようになってきた。というのも、学生時代の研究と比較して、今の仕事の方が楽しいと感じるからである。楽しくないと思いながら悶々と生活をしていると、いずれストレスに苛まれ身を滅ぼしてしまうが、変化を受け入れながら日々楽しく過ごすことが私は働く上で大切であると考える。そしてそれがやり甲斐に繋がり、働く意味になるとも思える。もちろん、働くことはお金を稼ぎ生きるため、家族を養うためでもあるが、それ以上に自分自身が働くことを楽しまなければならない。
誰しも必ず変化に直面する時期が訪れる。そこで自らが『どう考えるか』そして『どう行動するのか』でその後の仕事観・人生観が変わってくる。これから先の人生、私に訪れる変化は、この1年間での変化よりも大きなものになるだろう。そして、その変化を日々楽しみながら好奇心を持って働いていき、豊かで幸せな人生にしていきたい。