【公益財団法人 日本生産性本部 理事長賞】

私に出来る3つのことと一つの大きな夢
岐阜県  佐藤勇児
 私は、35歳の弱視の視覚障害と軽い下肢障害を持ったマッサージ師です。たくさんの人に助けられ人一倍努力し明るく振る舞ってきました。そして、だからこそ出来る3つのことと一つの大きな夢があります。
 出来ることの一つ目は、人々をマッサージを通して笑顔にすることです。私は老人介護施設でマッサージやリハビリを通して多くのご老人方と接しています。ご老人方はとても愉快でお話をしていて決して飽きません。ふいにふさぎ込んでしまったり元気が無かったりする時もありますが思い出話や身の上話を通して信頼関係を深めています。私が伺うと「先生、先生!」とおっしゃってくれます。私は必ずお名前でお呼びし、食べたご飯のことやお天気の話をしたり冗談を言ったりします。冗談で笑顔になってくれるわけではありませんが自分のことを分かってくれている人がいつも来てくれるというのはとても頼もしいはずです。みなさん施術の時間は笑顔になっています。そして、ここでの笑顔がとても重要なのです。笑顔はただ笑顔を作るだけでも免疫力を向上させたり認知機能の維持や認知症予防に効果があるのです。お互い笑顔で接しても劇的な変化はないでしょう。しかし、笑顔一つで変えられる健康の一つは必ずあると確信しています。
 出来ることの二つ目は、ご老人方を笑顔にすることで認知症を遅らせたり緩和したりすることで医療費をわずかながらでも抑えられていることです。高齢社会になり医療費が問題になって久しく、国家予算に占める医療費の割合は年々高くなっています。
 しかし、私はご老人方を笑顔にすることで免疫力や認知能力の維持を通してわずかながらではあるものの、医療費抑制に貢献しています。それは、拡大解釈すれば全ての納税者を笑顔にしているのです。
 出来ることの三つ目は、施術したご老人方を笑顔にし、施術していない納税者の方々を医療費を抑えることで笑顔に出来ているという実感を持つことで自分自身も笑顔に出来ていることです。自分自身を笑顔にすることはただの思い込みなのかもしれません。ですが、35歳で弱視の視覚障害と軽度の下肢障害を持っていると自分を肯定することが難しくなってしまいます。他の35歳はもっと大きなことを成し遂げていて人や社会に貢献できています。また、障害は誰かに手伝ってもらわなければ現実的には何もできません。そうするとやりがいを感じたり、仕事に積極的になれなかったり自己肯定感を持つのが難しくなってしまいます。誰かから応援されて元気になるだけでなく自分自身で元気になる方法を持つと言うことはつまり自分を自分で笑顔にすると言うことなのです。
 そして、弱視の視覚障害と軽度の下肢障害を持った35歳の私は、出来ること3つを通して大きな夢を持っています。それは、重度障害を持ったマッサージ師がより多くご老人方と接することが出来る環境を作るという夢です。法改正が行われ法定雇用率も上昇しました。ですが、公務員に占める重度障害者の比率は依然低いままなど障碍者にとって決して生きやすい社会にはなっていません。特に私の様な重度障害者ともなると社会に悲観するようになってしまいます。ですが、私は仕事を通して自分があらゆる人を笑顔に出来ていると思うことで自分自身も笑顔にしています。これは、次の世代の重度障害者への架け橋になる活動ではないでしょうか。私は来月36歳になります。36歳は世間一般では指導的な役回りを求められる立場です。私も出来ること3つを通して重度障害を持ったマッサージ師がより多くご老人方と接することが出来る環境を作るというこの大きな夢の実現に邁進していきたいと思っています。そして、他の職種へも仕事を通して重度障害者が社会に接する環境になっていければと願っています。
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