【公益財団法人 勤労青少年躍進会 理事長賞】

テーマ:B仕事を通じてかなえたい夢
デザイナー×保育の可能性
三重県  ひか 29歳


 私は幼少期から絵を描いたり工作するのが好きで、将来の夢はデザイナーになる事でした。美術部に入り油絵を描いたり、勉強も頑張って芸術系の大学を卒業し、印刷会社のデザイナーとして就職しました。会社では印刷物のデザインやWebデザインを担当し、順調に3年の月日を迎えようとしていましたが、その日は突然やって来たのです。
 寝ても睡眠が浅く、気持ちが不安定、そんな違和感が増えてきたある日、夜になっても眠れなくなってしまいました。最終的には一睡もしなくても眠気がなく、身体はだるく、食欲もないので仕事に行けなくなり退職せざるを得なくなりました。なぜこうなってしまったのか、ストレスや性格、肩こりなど思い当たる節は沢山ありましたが、病院に行っても決定的な理由が分かりません。それに加えてうつ症状も出ており、ここから体調を整えるのに約2年かかりました。
 その間私の心は穏やかではなく、今までずっとデザイナーの道で頑張ってきたのに突然働けなくなってしまった事がショックで、どうすればいいのか分からなくなってしまいました。また、私にはデザイナーの仕事が向いてないのだろうかと不安になりました。でも今やれる事をしなきゃと思い、再びデザイナーとして働くために自分の今までの作品を纏めながら、中々治らない体調と闘う日々を送りました。
 少しずつ回復し退職から約1年半、満を持して再びデザイナー職に挑戦すると、やっと改善しかけていた不眠症が再発してしまいました。元の状態に逆戻りし始めたので慌てて退職し、今度こそ本当にどうすればいいのかと困り果ててしまいました。
 それから約半年ほどは、体調の波に合わせて短期や単発のバイトをこなし再び回復を図りながら、デザイナー以外の選択肢を考え始めるようになりました。すると、立ち仕事中心の体を動かす仕事を続けると不眠症が少しずつ改善する事、そして接客の仕事をしている時は時間を忘れるくらい楽しいと思う事に気付きました。
 しかし、まだ本当にデザイナー以外の道を選んでいいのだろうかという不安がありました。それは今まで周囲の協力のおかげでここまでやってこれて、私にはデザイナー職を続ける責任があると思っていたからです。そこで親にも恐る恐る現状や今後の展望について話してみた所、意外な返事が返ってきました。「何でもあなたのやりたい事をやればいい、そんなに気負いすぎなくていいよ」と言って貰えたのです。その言葉は私の心をかなり軽くしてくれました。そしてやっと、デザイナーの仕事にこだわらなくてもいいか、と心から思う事ができました。それから人と関われて、自分が健康的に働けそうな仕事を沢山考えた結果、保育士を目指す事を決断しました。
 今は資格取得のための勉強をしながら保育補助として働き半年ですが、前職より生き生きと仕事が出来ています。私はデザインも好きだけど人と接する事も好きで、毎日の事となると人と会話できる仕事の方が自分の性格的には合ってるかもしれない、と感じるようになりました。頑張ったおかげで保育士資格も今年中には取得できそうです。
 そして新しい夢も出来ました。それは絵本を作る事です。子供たちと接している内に、絵本の偉大さを知り、私の今までのデザインの知識と保育の知識を掛け合わせればみんなに喜んで貰えるような、素敵な絵本が作れそうだと予感したからです。まだ公募に1回出してみただけですが、これから時間を見つけて挑戦し、いつか皆さんに手に取っていただけるように頑張りたいです。
 また、この夢のおかげでデザイナーを目指して今まで頑張ってきた自分の気持ちが報われた気がします。今までの経験を無駄になんて決してしないという強い気持ちを持つ事が出来るようになりました。まだ保育の道も始まったばかりですが、どんな挫折があっても新しい道を開拓して、いつでも夢を持ち続けていたいです。

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