【公益財団法人 勤労青少年躍進会 理事長賞】
私が「働くこと」について真剣に考えるようになったきっかけは、父の突然の死でした。10年以上前、私は日本で働きながら技術や知識を学び、将来は家族を支えたいという夢を抱いて日本語の勉強に励んでいました。しかし、初めて日本へ渡る準備をしていた矢先、最愛の父が突然この世を去りました。深い悲しみの中にいましたが、残された母と幼い弟たちを支えるため、私は立ち止まることができませんでした。その時初めて、私にとって働くこととは、単に自分の夢を実現するためだけではなく、家族を守るための「責任」でもあるのだと気づきました。
私は父を失った悲しみを胸に抱えながら勉強を続け、2016年に技能実習生として来日を果たしました。日本での生活は決して簡単ではありませんでした。言葉や文化の違い、仕事の厳しさに戸惑うこともありましたが、「家族のために頑張る」という強い思いが私を支えてくれました。また、当時の会社の皆様には、仕事だけでなく生活面でも多くの支援をいただきました。おかげで安心して働くことができ、人とのつながりや感謝の大切さを学ぶことができました。3年間の技能実習を終えて帰国した後も、「日本で再び働きたい」という夢を持ち続けていましたが、新型コロナウイルスの世界的な流行によって計画は大きく変わりました。先が見えない不安な日々が続きましたが、私は諦めずに日本語の学習と自己研鑽を続けました。
そして素晴らしいご縁に恵まれ、今の会社に正社員として採用していただくことができました。帰国から6年後、再び日本の地に立つことができた時の喜びは、今でも忘れることができません。天国の父も、きっと喜んでくれていると思います。現在は島根県で暮らし、妻と娘も日本へ呼び寄せることができました。家族と共に安心して暮らせる日々に、大きな幸せを感じています。入社以来、上司や先輩方、そして地域の皆様には本当に温かく支えていただいています。異国の地であっても、安心して生活し、仕事に取り組める環境があることに、心から感謝の気持ちでいっぱいです。
こうした経験を経て、私は「働くこと」に対する考え方が大きく変わりました。以前の私は、働くことの目的はお金を稼ぎ、家族を養うことだと思っていました。しかし今は、それだけではないと確信しています。働くことは、自分自身を成長させることであり、人とのつながりを築くことです。そして、自分が誰かに支えられて生きていることを知り、今度は自分も誰かを支える存在になることだと考えました。これまで多くの方々に助けられてきたからこそ、今度は私が誰かを支える側になりたいと思っいます。
私の夢は、日本とベトナム、そして人と人との心をつなぐ架け橋になることです。働くことを通じて得た学びと感謝の気持ちを忘れず、これからも会社や地域社会に貢献していきます。そして、日本人と外国人が共に支え合い、共に成長できる温かいコミュニティづくりに貢献していきたいと思います。これこそが、私が働くことを通じて得た気づきであり、これからも人生をかけて大切にしていきたい信念です。