【一般財団法人 あすなろ会 会長賞】
私は医療機関の障害者雇用で、短時間のパート勤務をしています。
主な業務は、患者さんのベッド周りや床頭台の拭き掃除、トイレ清掃、汚物や医療廃棄物のゴミ捨てです。
「時給、安いんでしょ?」「汚くて臭い仕事、よくできるね」と、言われることが時々あります。
言われて傷つき、嫌な思いをすることもあります。ですが、嫌な思いを吹き飛ばすくらい、嬉しいことがあります。
それは、私が働く姿を見て、患者さんが声をかけてくれることです。
私は20代の時に、引きこもりを経験しました。同年代は様々な経験をしながら、生き生きと働く姿に、嫉妬していました。
働きたくても働けない。
働いても長続きしない。
自責の念に苛まれ、抑うつ症状や不眠症状に悩んでいました。20代後半で、自閉スペクトラム症と診断された時、働くことに対して、不安な気持ちを持ちました。
なぜなら私は、苦手なことへの対処法が分からず、頭の中が混乱し、適切な行動に移すことができないからです。
その結果、二次障害で抑うつ症状と不眠症状が表れ、日常や社会生活に支障をきたすようになりました。
ある日、ハローワークで求人を検索していた時、医療機関の求人が目に留まりました。就業場所は私が以前、原付バイクを運転中に転倒し、手術と入院、リハビリでお世話になった医療機関です。
微力でも貢献できればと思い応募、面接を受け、採用をいただきました。
数年ぶりの就労です。
ですが、いざ働いてみると、心の中が不安と緊張の気持ちで一杯になってしまいました。
なぜなら私は、臨機応変な対応や、複数のことを同時に進行させることが苦手だからです。
そして、対人関係を築くことも苦手です。
医療現場で重要視されることが、自分の苦手なことだと実感した時、退職が頭をよぎりました。
私は面接時にあらかじめ、障害があることや苦手なことを伝えていました。
苦手なことへの対応策は、複数のことを同時に進行させるのではなく、一つの業務が終わったら、次の業務に取り組み、一つ一つの業務を着実にこなすこと。臨機応変な対応を求められる時は、必ず看護師や看護助手に相談すること。対人関係で悩んだり、困った時は、役職者に相談できるよう、配慮してもらいました。
業務で配慮を受けつつ、私が特に力を入れている業務は、清掃です。
患者さんが安全安心に入院生活が送れるようにすることや、感染症対策、清潔を保ち、職員の皆さんが業務に専念できるようにするためです。
このことを心がけながら清掃をしていると、患者さんから声をかけられます。
「お疲れさま。ありがとう」
「細かい所まで掃除してくれて、ありがとう」真剣に清掃する姿を、患者さんに見られていることに、私は全く気づきませんでした。
どんな仕事も、自分が真剣に取り組む姿を見ている人は、必ずいるんだと感じました。
工事現場や配達員、交通誘導や家庭ゴミの回収車。
真剣に働く人達は、たくさんいます。
いわば、縁の下の力持ちです。
私達の日常生活に直結する仕事を担っています。
「与えられた仕事に取り組めばいい」
「自分の仕事なんて、誰も見ていない」
そんなことは、決して思わないでください。
どんな仕事も、あなたが真剣に働く姿を見ている人は、必ずいます。
自分の働く姿に、誇りを持ってください。