【 奨 励 賞 】

【テーマ:仕事をしたり、仕事を探したりして気づいたこと】
憎しみが感謝へと変わる時
長野県 臼 井 初 穂 49歳

私は、高校卒業後、某アルミサッシメーカーに就職した。社会経験が全くなく右も左もわからなかっ た。前の事務員の方が、病気退社すると言うのだ。引き継ぎ期間は、たったの一日であった。当然のご とく分からない所だらけで、仕事内容は、所長も知らなかったのだ。

私は、毎日のように支店の事務員の方に聞いていたのだ。とにかく自分の仕事を覚えるのに手一杯な のに約800種類と呼ばれる、サッシ、ベランダ、カーポート、キッチン、鍋などの商品のことを覚えなけ れば、ならなかった。また、経理事務、営業事務、ショールームアドバイザーと3つの仕事をこなせな ければならなかった。

初めて電話を取った時、上司の不手際で、お客さんから怒鳴られてしまい、それから電話を取るのが、 怖くなってしまったのだ。上司は、電話が鳴る度、私に、「電話!!」と言い、私が話し中以外は、私に電 話を取らせようとしたのだ。

所長は、出来の悪い私に対して、上司に私に辞めるように言えと、命令していたことを耳にした。そ れを知った先輩は、私を抱きしめ、「私は、貴女を絶対辞めさせないからね。」と言ってくれたのは、と ても嬉しかった。

私も何度も辞めたいと思ったかわからないのだ。求人情報を見る度、電話しようと思っても、優しい 先輩のことを思い出すと、指が、言うことを利かないのだ。あれだけ毎日毎日、所長や上司にうるさく され、怒られても私は負けなかった。家に商品のカタログを持って行き、必死に商品を覚えたのだ。会 社に行けば、お客様のクレームだらけで、何度も所長に呼び出され、説教される日々だったのだ。

入社して、約一年が経った。私は、仕事をバリバリにこなせるようになり、営業職として、後輩が、2 人入社し、私が商品のことを教える立場になった。まだまだ人手不足だった。私は、新たに商品の見積 りの仕事が加わった。これで、経理事務、営業事務、見積り、ショールームアドバイザーの4つの仕事 をこなした。お客様からの信用も厚くなり、私への指名の電話が多くなった。今では、所長や上司から、 「会社にいないと困る人」と、変身したのだ。あれ程、所長や上司が、うるさいと感じていたが、ここまで立派に育ててくれた所長や上司へ感謝の気持ちで、いっぱいになった。

戻る