【 奨 励 賞 】

【テーマ:仕事をしたり、仕事を探したりして気づいたこと】
働くってなんだろう 私が仕事をしたり、 仕事を探したりして気づいたこと
神奈川県 NAKANO, Ryoichi 53歳

私はバブル期に大学を卒業し、大多数の人と同じように何の疑問ももたず大企業に入り、30代に成果 主義が導入された後は年収一千万を超えるようになったが、残業も月200時間を越え、40歳頃自律神経失 調症を患い、二度の休職の後、社内のいじめにもあい、自己都合退職を余儀なくされた。

大企業のエリートのブランドが転職に優位に働き、失業期間なく、二回転職は成功したが、3回目の 転職が、折しもリーマンショックの時期にも重なり、私は失業者となった。

失業保険受給期間も満了し、日雇いバイトで糊口を凌いだ。住宅販売会社の現地案内プラカードの仕 事も何回かやったが、路上で以前の会社の部下に出くわし面食らった。

自律神経失調症はうつ病と診断を変え、症状は一向に改善されず、処方される薬は種類、量とも増え る一方だった。3ヶ月の入院加療を勧められ、入院先で躁うつ病と診断された。

2度の入院により症状はよくなったが、退院後も相変わらず仕事はなく、むしろ入院期間のブランク がマイナスに評価されたのか、書類選考さえ通過しなかった。

その時、障害年金のことを知り、年金事務所に何度も相談に行った。認定までは困難を極めたが重度 の精神障害者と認定され、年金のおかげで生活が安定した。

生活再建の目処がたち、精神的に安定したせいか、医療機関に正社員として採用されたが1年半で解 雇。起業準備中に某大学の派遣のキャリアカウンセラーとして雇われるも派遣期間満了で解雇。その後、 タクシー会社の無線配車オペレーターに採用され、現在、都内で無線配車オペレーターに従事している。

と同時に障害者認定条件を満たさなくなった。

以前、キャリアカウンセラーとして働いていた大学のゼミで、自身の経験をもとに働くことと就活の 心構えについて話をしたことがある。前に座っていた2割の学生は熱心にメモを取り質問も受けたが、 多くの学生はどうやったら成功するかのノウハウは聞きたがるが、他人の失敗から学ぶことは難しいよ うに感じた。他人事ではなく、人生落とし穴だらけで5cmの段差で人はつまづくこともあるが、つま づいてみないとわからないのだが。

これまでの「働くこと」について、これまでの人生で仕事をしたり、探したりして気づいたことを申 し上げます。

まず、働くことは「生きがい」を与えてくれます。働くことを通じ、他人に頼りにされたり、協力し あったりして仕事がうまくいった時の喜びは大きい。

一方で働くことは「試練」を与えてくれる。苦手な人はどの職場にいてもいる。どうして自分ばかり 攻撃するのかわからないセクハラ、パワハラ、嫌がらせを受けることもある。他人を変えることは難し い。しかしその経験を経て、人は成長する。たとえ選択肢を誤って、人生はドロップアウトしても、人 間的に成長すると思います。

そして、働くことは「出会い」。継続的な人間関係という特性、毎日顔を合わすという前提だからこ そ、まわりに関心を持たざるを得ないし、まわりも自分に関心を寄せてくる。その職場限りの出会いが ほとんどだが、中には一生ものの友人を得ることもあるし、一生の伴侶を得る可能性があるのもまた職 場。仕事への真摯な取り組みや周りの人への配慮を未来のパートナーがみている可能性があるのもまた 仕事でつながる職場なのです。

だから私たちオトナは若者たちに「生きがい」「試練」「出会い」を与えてくれる「働く機会」を与え る義務があるのです。人間は一人では生きていけない生き物なのですから。

戻る