【 奨 励 賞 】

【テーマ:仕事をしたり、仕事を探したりして気づいたこと】
こんな私ですが
京都府 ト モ チ 55歳

中高年、障がい者、小さい子どもがいて実家等周囲からのサポートは受けられない女性。この3人が 応募してきたら誰を採用しますか?

年齢が高いと物覚えが悪かったり今までの経験に頼って失敗したりするかもしれない。自分の子ども の様な若い世代の先輩や上司とうまくやっていってくれるか不安にもなる。

障がい者はどう扱っていいかわからない。コミュニケーション能力に不安も感じられる。

小さい子どもがいる女性はいつ突然休むかもわからない。たぶん休むことも多いだろう。

6年前、こんな不安とマイナスポイント高めの私が思い切って正規雇用を目指すことになった。それ までは好きな本に囲まれて大学図書館で嘱託やパートとして勤務していた。雇用期間、継続回数に制限 はあるものの楽しかった。でもこのままでいいのかと思う時もあった。

私はある程度の年齢になってから障がい者になった。新卒なら障がい者枠を利用して公務員や大企業 の正社員を目指すこともできる。しかし、そうでない場合はパートや嘱託での雇用がほとんどだ。お給 料も安いし、身分も不安定。何よりも「障がい者の雇用率達成のためだけに採用した。」という雰囲気が 嫌だった。入力ばかりの単純作業、郵便物の仕分けや雑用係......。ハローワークで目にする求人票はそ ういうものが多かった。

「年金をもらっておられる方もありますし、短時間でそこそこお給料をもらえたらいいという人も結 構おられるので。」ハローワークの担当者はそう教えてくれた。でも実際に面接に行って待ち時間などに 他の障がい者の方と話すと「本当は正規雇用で長く勤めたいのだけどなかなか見つからなくて。」とい う人が圧倒的に多かった。私も障がい者年金をもらっていないので「生活が成り立つお給料がほしい。」 と考えている。「本当は......。」そんな言葉を飲み込んで「それでも好きな大学図書館で働けるなら」と 勤め始めたのだった。

それが引越しで勤務先が遠くなり保育園の送迎に支障が出始めた。考えた末に「転職しよう。それも 後退する転職ではなくステップアップする形の転職を。」と決意した。50歳を目前にした立派な中年女性 でしかも障がい者。おまけに保育園児の育児中でもある。こんな私が転職し、正規雇用してもらえたら 同じハンディを抱えながら働いたり、就職活動をしている人に明るさを届けられるのではないかと思っ た。そしてそうなりたいと思った。

粘り強くハローワークに通い、今の職場を紹介してもらった。障がい者を採用するのが初めてという ことで受入れ態勢はほとんどできていないに等しかった。

「あの人だけ特別扱いして楽をさせている。」

「本当はもっと動けるのに体が弱いふりをしているんじゃないか。」

「あの人と同じ部屋になったらこっちの負担が増える。」

そんな数々の蔭口が聞こえてきた。目の前であからさまに「いいよね。楽できて。」と言われたことも ある。

1年目は双方お試しということで嘱託採用だった。2年目に正規雇用になったが給料は新卒と同じと ころからスタートだった。今も「生活が成り立つお給料」ではない。

それでも少しずつだが理解者が増えてきた。

「子どもの病気で急に休んだこと無いよね?」

今まであまり私のことを快く思っていない素振りをみせていた女性の先輩(年下)から言われた時は うれしかった。

今はまだ私の後に続く人はいない。「障がい者って様々でなかなかうちの会社とあう人がいなくて。」 と採用担当者が教えてくれた。

こんな私でもがんばっている。もし私が小さな灯りをともせているならどうか一緒に大きくしてほし い。スタートが遅くてもハンディがあっても人生100年、まだ夢をあきらめない。

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