【 奨 励 賞 】

【テーマ:仕事をしたり、仕事を探したりして気づいたこと】
みんなに感謝
茨城県 益 子 初 美 64歳

結婚して2年が過ぎた頃、妊娠したことが分った。共働きを続けたいので、近くに住む義父母に、子 供を預ってもらえるかどうか、伺いを立てた。

義父は既に退職しており、義母は専業主婦だったので、気持ち良く承諾してくれた。

職場は、男性が8割で圧倒的に男性優位の環境だった。労働の休暇にも6週間の産前休暇と8週間の 産後休暇は、女性職員全員取っていたが、産後の休暇が終わり、通常勤務に戻ったときに、朝2時間遅 くするか、退勤時間を2時間早くするか、選択できる育児時間を取る人は皆無だったことが、分った。

だが私は、長女を出産してから授乳したり、子どもとも接したいので、取得できる権利を使いたいと 思い、上司に伺いを立てた。

退勤時間を2時間早くして欲しいと話し、書面を提出したら、「育児時間を取るのは、あなたが初めて です」と、語気を強めながら、上からの目線で、言葉を続けた。

女性職員皆が、育児時間を取り辛い意味が分かったような気がした。上司の理解のない発言や同僚に 負担が掛かることを熟慮して、取得する人がいなかったのである。

だが私は、使える権利を行使しなければ、働き続けることができないし、もったいないし架空の規則 だと思うようになっていた。

後に続く女性職員が子供を持っても長く働き続けられるよう、実績を残すことを決意した。

その後、3歳までは義父母宅で見てもらい、保育所へと通い続けていた。その間に、移動手段として、車が必要と分かり運転免許を取り、行動範囲を広げていった。

4人の子供を出産しながら、41年間勤めた職場を卒業することができた。

仕事を続けてこられたのは、職場の同僚の理解と協力に支えられ、義父母に無理なお願いもし、地域 の人や友達にも声をかけて、手を掛けてもらったこと、他ならない。

働き続けることで社会とつながり、人のために役に立っているという自負と責任が、日常を支えてく れていた。

人の話に耳を傾け、大きく心を開け、自分の信じる生き方を、真直ぐに進み続けることが大切だと思っ ている。

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