【 公益財団法人 勤労青少年躍進会 理事長賞 】

【テーマ:仕事を通じて、こんな夢をかなえたい】
母から学んだ働くことの意味
信州大学 高 奕 18歳

仕事をすること、それは誰かのためにすることだと思う。

私は中国で生まれ、4歳の時に父の仕事の影響で日本に来た。母は家族全員で暮らすことを優先して中国で勤めていた仕事をやめ、姉と私を連れて日本に来ることを決断した。日本に来て日本語が全く話せない母が一生懸命働いている姿を私は幼いころから見てきた。私が高校受験の日も大学受験の日も母は休まずに働いていた。職場から、時間を盗んで送られてきた「頑張ってね」というメールは隣にいてくれるより何倍も心強いものだった。しかし、ずっと不思議だった。母がどうしてこんなに頑張っているのか。何が母をそこまで突き動かしていたのか。

今、私はずっと行きたかった大学に進学し、一人暮らしをしている。夢にまで見た場所での大学生活が始まって2ヶ月が経ち、私もアルバイトを始めた。大人の世界に飛び込んでみて、たくさんのことに気づかされた。お金を稼ぐことがこんなにも大変なこと、いろいろな人がいるということ、人に伝えることがこんなにも難しいこと。そして何よりも母がすごいということ。どんなに忙しくても弱音を吐かず仕事をしていた母が、毎日おいしいご飯を作って家で待ってくれていた母が。仕事を始めて1ヶ月が経ち、ずっと気になっていたことを母に聞いてみた。母はどうしてあそこまで頑張っていたのかと。母からの答えは意外なものだった。

「家族がいて、その幸せを守らなければいけないから」

電話越しで聞こえた母の優しくも力強い言葉に涙が止まらなかった。そして、このとき私は心に誓った。私も家族ができたら母のようになると。

アルバイトの帰りに必ず家族に電話をするようにしている。電話をするたびに「疲れすぎてない?大丈夫?」と心配をされる。疲れているわけがない。私にも働くことの本当の意味が分かったから。仕事 を始めてからもらった初任給で母の日にマッサージ器、父の日にスポーツ用品を買ってプレゼントした。たった5000円程度の物なのに父にも母にも「なんでそんなに高いものを買ったの」と言われた。姉と私を育てるのにお金を使うことを全く惜しまなかった両親が言った言葉に正直とても驚いた。そして、うれしそうな両親の声を聞いて、愛されていることに気づくと同時に今まで育ててくれたことへの感謝の 気持ちで胸がいっぱいになった。

働くということ、それは人のためにすることだと思う。それは医者であれば患者さんのために、接客業であればお客さんのためにということである。しかしそれ以前に私は、周りの大切な人のためにでも あると思う。仕事をして流した汗や涙は自分の成長につながるものであると同時に周りの大切な人に対する感謝の気持ちに気が付かせてくれるものだと思う。

今だからこそ母に伝えたいことがある。

「日本に連れてきてくれてありがとう」

つらいこともたくさんあったけどそれ以上に忘れることのできない楽しい思い出を作ることができた。生涯の友達に出会うことができた。そして、叶えたい夢を見つけた。私の夢は航空会社でグローバルスタッフとして働くことだ。自分の言語能力を生かし、人の役に立ちたい。そして支えてきてくれたすべての人に恩返しがしたい。この夢を叶えるためにはたくさんの努力をしなければならないだろう。夢を叶えたとしても困難に直面することがあるかもしれない。しかしそんな時でも私は絶対に立ち上がれる自信がある。


働くことの本当の意味に気が付いたから。今度は私が家族を守る番だから。

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