【 入選 】
高校生で社会にインパクトを与えたい。
「まずは挑戦してみよう」という思いから私は起業コンテストに参加した。自らの留学経験に基づい た、高校留学の経験談共有の場を提供することを目標とし、ビジネスモデルを考案していた。その過程 で大学生から社会人まで、実に多様で貴重なアドバイスをいただいた。数々の指摘は正論ではあったが、 同時に起業、社会の厳しい現実を私に突きつけてきた。実現可能性を否定され、そもそものプランの見 直しを要求される。また、与えられた様々なアドバイスも、どれを受け入れるべきか分からず、自信を失ってしまった。所詮、未熟な高校生に起業なんて早すぎたのだ。悔しくもその事実を受け入れようとしていた...。
そんな時、必死の思いでベンチャー企業のブランディングを手掛ける人に電話を掛けた。
「納得行くまで話そう」
藁にもすがる思いで駆け込む私の相談に彼は快く応じた。私には最後の望みであった。だが、この電 話が私の心から尊敬する人との出会いとなった。悩みが晴れただけでなく、事業案の新しい展開も見え てきた。彼は今までのアドバイスとは異なり、私の根源にあるアイデアと問題意識を尊重したのである。
「なにがあなたをそこまで突き動かすのか?だれを一番幸せにしたいのか?」
彼からアドバイスを聞くつもりが、彼の問いかけに対して自然と私が話すようになっていた。ビジネ スについて右も左も分からない私に初めて真摯に向き合ってくれた人である。悩みが晴れ、再始動する 充実感とともに、刺激を与えてくれた出会いであった。彼は私がなりたいと憧れる大人の姿であった。相 手が誰であろうと悩む人に寄り添い、自身のキャリアを踏まえてアドバイスや手助けをする。そんな彼 との出会いによって、大人という今まで別次元にあった存在との距離が縮まった。
それからは事業説明のまず初めに、起業意志の根底にある本質的な動機を語るようになった。問題意 識をもった原点となる経験は私だけがもつものである。それは誰からの指摘で変わることはなく、批判 されるものでもない。私はそれまで躊躇っていた大人からのアドバイスをもらうため、より多くの社会 人、人生の先輩と会って話すようになった。そして、手を差し伸べてくれる人が多いことに驚いた。共 感を得て、人を紹介してもらい、また新しく人と会う。そんなプロセスを経て、私はやがて社会に出て、 働くことの意義を見出すようになった。より広く、多くの人と出会うこと。いかなる職業に就いたとし ても、この「人との繋がり」は大切にしたい。他者の経験やアドバイスを受け入れることで、自らの知 見を豊かにする。働くこと、社会に出ることでより広くその機会に巡り合えるだろう。
コンテストの最終プレゼンテーションでは賞を頂くことができた。彼はただ笑って、「本気になる人を全力でサポートする。それがたとえ高校生でも。」彼の熱い応援には私の10年後の姿をもって応えたい。次は私が大人となって、次世代に手を差し伸べたい。