【 入選 】
「お前の仕事を、全て取り上げる!」
入社3年目の夏。上司からそう伝えられました。理由は、納期の遅れ、コミュニケーション不足等に よるミスが多発したことでした。生まれ持った特性がミスの原因でした。僕は発達障害であるADHD、 ASDと診断されています。他者とのコミュニケーションが苦手、想像力の欠如、ケアレスミスが多い など、職場での悩みや問題になりがちな障害です。子どもの時に障害に気付く人もいますが、僕は大人 になるまで気付きませんでした。大学生までは、特に大きな問題もなく生活してきましたが、社会人に なってから特性が原因でミスが多発しました。
仕事がない状態のまま、半年後に異動。しかし、異動先で急にうまくいくはずもなく、新しい上司から「安心して仕事を任せる事ができない」と指摘を受けました。最初は、その指摘を受け入れることが出来ず、とても苦しみました。ただ、その上司から「苦手な事を理解しよう」、「知らない事を知ろう」、「間違える人である事を理解しよう」、「自分の作った殻を破ろう」と色々な角度から指摘をいただき、そのおかげで、自分の特性を理解し受け入れることができました。障害特性を調べていくと、ADHDやASDの特性に当てはまる事が多く、その対策を実行することで少しずつ生活が楽になりました。
今では、自分の特性は強みや弱みの1つだと考えています。視力の悪い人が眼鏡で対策をするように、 自分の特性も対策することで、生活しやすくなると思っています。発達障害を持ちながら仕事で活躍し ている方の成功談を貪るように読みました。特性に対策を行い活躍する姿はとても輝いていました。そ して、発達障害の特性を持っていても行いたい仕事が出来、活躍できると未来への希望を持つことがで きました。また同じように自分の特性を理解して対策を行い活躍したい、そう思うようにもなりました。
現在は前職を退職し、大人の発達障害専門の就労支援施設に通っています。施設では、発達障害特有 の特性に対して学び、キャリアプランを考え、自分の特性と対策を考えたりしています。自分の特性を まだ全て理解していないと自覚しているからこそ、キャリアを見つめ直し、特性の理解を深める事につ ながっています。
前職では、総務・広報・営業まで幅広く行う事務職だったのですが、その業務の中でも、自分が書い たプレスリリースや自分が作った広報誌によって、伝えたい内容が広まっていくことに、喜びを感じて いました。今後はその広報の仕事を、自分自身の強みを活かし行っていきたいと考えています。施設で 学んだ自分の強み、弱みへの対策を行い、特性があっても活躍できる存在の一人となっていきたいです。
特性の影響で仕事が半年間無かった僕が活躍することで、発達障害を持っていても自分がしたい仕事 で活躍することができる。大人の発達障害当事者の方々に、そう思ってもらえることが僕の夢です。