【佳作】
今、私は日本から遠く離れた地、カメルーンで留学中である。「世界平和」という、果てしない夢への 私の歩みだ。
カメルーンのUNHCR(国連難民高等弁務官)での難民支援インターンシップ。難民や庇護申請者が 直面している問題を実際に現場で知るほど、終わりのない支援の現状に、思い描く未来とのギャップを 感じずにはいられない。早く世界中にもたらしたい「平和」という2文字。不可能と言われるこの理想に 挑戦してみようではないか。笑うなら笑え。たとえ君が笑おうが、私の夢は揺るがない。なぜなら、そ れは私の夢であると同時に、私に課せられた義務でもあるのだ。自身のキャリアを懸けて取り組むべき 問題。
しかし、私には何ができるのだろうか。この留学中、その答えは何通りも浮かぶ。現実味があるもの から、綱渡りをするような困難な道のりのものまで様々だ。ただこれらを考える上でいつも向き合うの は、現代の人道支援における問題だ。
人道支援と言えば聞こえはいいが、善意だけで行えるほど甘くない。モノにヒト、全てにお金はかか り、その量は支援対象者の量に比例して増大する。2016年のデータでは、難民、庇護申請者、国内避難 民だけでも、6650万人を超える。この数に、ストリートチルドレンや、各国内の貧困層を加えると果て し無い数になるだろう。今、国連機関をはじめ、各国際機関、NGOで資金が足りていないのが現実だ。私のいるカメルーンUNHCRでもファンディング率は3割を超えない。結果として、たとえ私たちが助 けたいと思っていても、助けられない人も出てくる。今後プロとして働く以上、善意でやり通せない部 分も増えてくるだろう。
列挙しだすと止まらない、平和構築における数々の問題。その中で、私の理想の数々を実現するため には何が必要なのだろうか。最初に思い浮かぶのは、「営利目的の支援を浸透させていくこと」である。やはりまずは財政的な問題を解消する必要がある。もちろん善意による寄付金を集めることも大切だが、 それに頼っている現状で十分に確保しきれていない。BOPビジネスという、ビジネスを通して社会問 題を解消する動きも広がっている。しかしこれも、善意がベースにある。そんな中残っている潜在的な 支援力は、人道支援に興味を持たない層である。彼らの層を取り込むには「win-win」を支援側と支援 先の間に築くしかない。莫大なお金が動くビジネスに、いかに人道支援を巻き込めるかを提案し、コー ディネイトできる能力を身につけたい。
また「最前線での支援」も欠かせない。やはり何をするにも現場を知っておくことは必要である。ネッ トの画面では分からない現状を把握することが必要であり、現場のニーズを正確につかむことができる。また、言葉にも説得力が増す。
さらには、いわゆる「忘れ去られた人道危機」に対するアプローチも必要だ。今、私自身が研究して いる、中央アフリカ共和国で起きている人道危機もその内の一つ。日本人のほとんどがその事実を知ら ない。だが、そこには南スーダンやシリア危機のような悲惨な現状が広がっている。1人でも多くの人 に残酷な世界の現状を知ってもらうことは、人道支援に従事する上で担いたい役目の一つでもある。
そしてこういった考えのもとたどり着いた結論が起業だ。自分の理想、理念を体現できる団体をもち たい。どんな考えでも1人しか持っていなければ、その考えはそこで途絶えてしまう。次に繋げるため、 そして私の理想を形にするために、人道支援の国際団体を立ち上げたい。これが私の夢への手段であり、 道筋である。
「世界平和」とは、日々誰かが築いている、築こうとしているのだろう。だが、その誰かとは誰なの か。とてもぼんやりとしていて、イメージすることは難しい。でも欠かせない存在である。それを担う のは自分であり、他の人からみた誰かが、その自分でありたい。