【佳作】

【テーマ:さまざまな働き方をめぐる、わたしの提言】
成長の糧
大阪府 かどや も も 29歳

私の夢は幼い頃から自分のお店を持つことでした。祖父母がお寿司屋さんを経営していることもあり、 私にとって一番身近な職業は飲食店だったのです。

今から3年前のこと。私はひょんな切っ掛けでアルバイトをしていた串カツ屋さんで、新店舗の店長 を任されることになりました。数名のスタッフで経営する小さなお店です。

完全に自分のお店とは言えませんが、夢が叶ったような正に夢見心地の気分でした。しかし、いざア ルバイトから店長へと立場が変わると昼夜が逆転する毎日、加えて休みは激減しました。串カツを揚げ たり一品を作る調理や接客自体はそれまで以上に楽しめたものの、店長をする上で最も大事なあること に悩まされました。それは人の上に立つ自覚や覚悟がその時の私にはなかったのです。管理職の経験が 皆無だったため高校生のアルバイトの扱いに大変苦しみました。全員が初めてのアルバイトで、接客の イロハ以前に、働く上のマナーや礼儀から教えなければなりませんでした。よく「1から10まで言う」 という言葉を耳にしますが、私の感覚としては「マイナスから0を言わなければならない」と言ったイ メージでした。例えば、出勤時にイヤホンを耳に付けたままお店に入って来る、お皿を積んではいけな い枚数まで気付かず重ねて割ってしまうというようなことがありました。気苦労が絶えず元々人に強く 言えない私は、注意や指導がうまく出来ずストレスを感じ、打開出来ない状況に耐えられなくなり体調 を崩してしまいました。手に力が入らなくなる程の脱力症状が治らず、そのまま店長の職を辞めてしま います。

現在の私は結婚し、大天職の末OLをしています。50名を超えるオフィスの事務職員なのですが、今 私は畑違いのこのオフィスで、2人の新卒社員の教育を任されています。大学卒業後の新社会人を育て る...店長だった時の苦い思いが蘇ることもありますが、状況は似ているようで環境は違うと感じていま す。私も相手も正社員ということ。そして先輩後輩というほど良い上下関係であること。ベクトルが同じ 人とは働き心地が良いとしみじみ感じるのです。正社員ならば自主性を持って自己判断して行動しよう、 そして自社への帰属意識を高め会社の利益をも考えて業務に当たろう、と私は考えます。この大切な段 階を新卒の2人には伝えていこうと思っています。指導することは私自身の成長にも繋がります。時に は叱れるようにもなりました。そして後輩から学ぶこともあります。こんなやり方があったんだ!と気 付かせてくれた時にはありがとうと言います。そうやって成長の輪を広げ、社会に貢献に繋がるのが理 想的な働き方ではないでしょうか。プライベートと同じように職場でもなりたい自分になる。マイナス だったと思える経験もすべて成長の糧へ変えていける、と私は提言したいのです。

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