【 奨 励 賞 】
ようちえんのせんせえになりたい
まだ覚えたばかりの平仮名を、何度も消して丁寧に丁寧に書いた紙が、卒園アルバムに挟まっている のを見つけた。丁度、私が進路について悩んでいる時だった。
小学生の頃は、ケーキ屋さんや歯医者さん、薬剤師など、人がやっているのを見ては憧れ、将来の夢 がころころ変わっていった。中学2年生の時にはいとこが生まれ、一緒に遊ぶうちに子供が大好きにな り、保育士になりたいと思った。初めて自分から好きなことを見つけたからか、保育士という夢はずっ と変わらなかった。
職業体験で幼稚園に行った時、子供達と一緒に過ごす楽しさや、話しかけてくれたり折り紙をくれた りという嬉しさを知ったと供に、少人数の先生が多くの子供をみなければいけない大変さも知った。そ の時から、命を預かることの重大さに目を向けるようになった。以前、いとこが階段で転んだ時にどう すればいいのか分からず固まってしまい、何もできなかった悔しさは今でも鮮明に覚えているし、保育 園のプールで遊んでいる途中におぼれて亡くなってしまったという事件も耳にした。幸い、いとこは軽 いケガで済んだが、保育士の責任の重さに気付き、恐くなった。それに加え、給料に見合わないハード な仕事内容などが原因で、若いうちから辞める人が多いというニュースを見て、私は耐えられるだろう かと不安になり、やっぱり保育士はやめようと思ってしまった。
それからは、最近必要とされている英語を学び、どこかに就職すればよいだろうと思い、心機一転し て新たに大学を調べる日が続いた。ようやくここに行きたいと思える大学が決まったある日、幼稚園の 子供達と先生が散歩をしている所に出会った。その様子がとても楽しそうで、「私も先生になったら子 供達と毎日一緒にいられる、絶対に幸せだ」と、また保育士になりたいという気持ちが強くなった。そ うは言っても、一度保育士はやめたいと思ったのだし、またやめたくなったらどうしようという不安が あった。そんな時に、あの幼稚園の頃に書いた紙を見つけ、なんとなく昔の自分が今の自分を後押しし ているように感じ、保育士という夢に向けて再び頑張ろうと思った。だから、何度も変わった私の夢は、 もう変わらないだろう。そして誰からも信頼される保育士になる。