【 奨 励 賞 】
学校の先生、それが小さい頃からの私の夢であった。その理由は、子どもが好きで子どもにも好かれ やすかったということもあるが、なにより尊敬する先生の存在があった。私も含め生徒一人一人に向き 合っていた、担任の先生たちは私の目には将来の理想像として写った。
しかし、年齢を重ねるにつれて、私のその夢は希薄になりつつあった。もちろん思春期特有の反発心 もあっただろうが、それ以上に教師という仕事の限界を感じてしまった。
まず第一に、中学校や高校では部活があり、顧問となった教師はそのために行動を制限されている。
実際に、私の通う高校でも多くの先生が部活のために忙しくしている。合宿や大会があればなおさらだ。しかし、これでは教育の基本である、学問をさらに追究することができない。部活により授業の準備や 新たな知識を得る時間が少なくなってしまう危険性がある。
では、部活がない小学校ではどうだろうか。これには免許取得可能な学部に制限があるという問題点 がある。小学校教員の免許は教育学部でしか取得できない。幅広い知識や技術が必要なのは理解できるが、 これでは、教育以外の分野の専門的知識を得ることは難しい。さらに、教育実習などがあるため、視野 を広げるチャンスである留学に行くことも難しい。
そして、私にとって最大の制限だと感じたのは、教師一人では解決できない問題があるということだ。例えば、中学校の頃に外国につながりを持つ同級生がいた。その同級生はよく変な日本語を話す奴とし てからかわれていた。当時は外国につながりがあることは気づかなかった。その後、私は外国につながる 子どもたちへの学習支援のボランティアに参加した。その時にやっと気づいたが、あの時どうすればよ かったか、と考えても現実的かつ理想的な考えはなかなか思いつかなかった。それは教師の立場に立っ て考えても同様であった。クラスの生徒の異文化についての理解を深めようとしても、さらに差別を助 長してしまうかもしれない。例え理解を得たとしてもクラスが変わればいじめが再発する可能性もある。つまり、教師一人で異文化理解やいじめに立ち向かうことは極めて難しい。場合によっては、制度その ものを変える必要があるだろう。
そのため、私は将来の夢を変えた。今の夢は文部科学省に入り、行政として制度を変えていくことだ。難しい夢だが、もし入省することができれば、まずは私が一番の課題であると思う、「国際的な教育」 に力を注いでいきたい。理由の一つは前述のボランティアから。もう一つの理由は私たちが何も知らな かったことに気づいたからだ。例えば、最近驚いたことでいえば、イスラームの人は豚肉以外の肉であ れども、ハラルフードでなければ食べられないということだ。これは教科書にも書いていなかったこと で、日本人の多くはこれを知らないだろう。教師であれども例外ではない。これを知らないことで、学 校の給食などでムスリムの子どもたちに宗教的苦痛を与えている可能性もある。
そのため、私はこれからの教育は「異文化理解」を重視するべきだと考える。外国人労働者の受け入 れや東京オリンピックを控え、異文化はどんどん流入してくるだろう。その時に、その文化に対しての 知識がなければ、友好な関係はもちろん築けず、排除するという手段しか見えなくなってしまう。これ を変えることができるのは教育である。
一方で、部活や、小学校教員の免許取得の制限の問題に対しては教員採用人数や教育免許を取るため のカリキュラムを改革し解決していく必要がある。さらに、人員増加やそのカリキュラムに異文化理解に関するものを入れることで、個々や異文化につながる子どもへの対応がしやすくなり、「国際的な教 育」にもつながるだろう。
このように、私は教育制度や教育に関する人事を改革していくことで、生徒だけでなく、教師も含め て、お互いに相違を理解し合える社会を作っていきたい。