【 奨 励 賞 】

【テーマ:仕事をしたり、仕事を探したりして気づいたこと】
おにぎりは背筋を伸ばす
神奈川県 海 田 和 果 21歳

「就職活動」という一言では括れないほど、私たちには多様な戦い方がある。半袖シャツにも汗が滲 むような7月に、真っ黒なスーツを着て、横断歩道を渡っていく、名前も知らない彼女はまだ戦場にい る。尊敬する反面、まだ就職活動を続けているということは、内々定をもらえていない「敗者」なので はないか。そんな意地の悪い気持ちが私の頭によぎる。本当は、そんなことではないのだと分かってい る。就職活動を続けているということには、様々な理由があるだろう。内々定はすでにいただいている が、もう少し自らの進路を探りたいと挑んでいる人、気長に構えてゆとりを持った就職活動をしている 人。将来思い描く未来、その理想だって、本当はカラフルなはずなのだ。あえて「就職」という選択肢を 選ぶ必要もないはずなのだ。しかし、就職活動を続ける友人たちはそのことを恥じているようだし、就 職先によって「優劣」をつけたがる風潮を感じる。就活生の私たちは自分たちの「勝ち負け」に敏感だ けれど、世間は皆一様な「就活生」としか見ていない。白いシャツとスーツの色から、私たちは「おにぎり」とソーシャルメディアでネタにされているらしい。

今年大学4年生となった私は、年明けぐらいから本格的に就職活動をはじめた。ゼミでリーダーを務 めたこと、サークルでコミュニティFMの番組制作をしてきたこと。面接で私は、今まで自分の頑張っ てきたことを精一杯に話していた。ある会社では2人の面接官の方々と対面したのだが、1人はいかに も眠そうで、もう1人は私と馬が合わなかったようだ。「あなたが優秀なのは分かりました」と言われてしまったとき、「就職活動は勝ち負けを決める場ではないのだ」と気が付いた。就職活動とは、「空気を つくること」である。面接官の方々と私の間に、心地の良い雰囲気をつくることができれば通過するの だと気が付くことができた。それは私の話し方かもしれないし、相性という完全に運任せの要因もある のかもしれない。しかし、これだけは言えるのが就職活動とは「勝ち負け」を見られているのではなく、 「個性」という数値化不可能な、「生身の私たち」を見極める場なのだ。

それなのに、「就活生」の私たちは不要なストレスを抱えて、「ここは戦場だ」と思いこんでいる。「就 活生」と一括りにするのではなく、ただ純粋に「自分自身」でいさせてほしい。「いさせてほしい」など という、他人任せでは駄目なのかもしれない。「自分自身」でいる強さを持とう。そうして、背筋を伸ば して前を向く私たちは自分以外の何者でもないのだ。

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