【 奨 励 賞 】
デザイナーと聞くと、どんなイメージを浮かべるだろうか。「おしゃれ」「かっこいい」「都会的」など など、憧れを持っている方も多い。しかしテキスタイルという言葉はあまり馴染みがないだろう。テキ スタイルとは織物や布地の事を指し、私は服や雑貨に使用する布生地の絵を制作してデザイン権を販売 する仕事を大学2年から続けている。初めは全く売れなかったが徐々に売れるようになり、デパートで 私のデザインの生地を見つけた時は嬉しさが込み上げた。
そしてこの仕事を続けて5年間、テキスタイルデザインについての私の今と過去、そして未来につい て整理する。
私は高校生の時から絵を描いて生活をする事を夢見ており、京都の美術大学へ進学した。
そこでどうすれば絵を描いて生活できるのか悩んでいた所に北欧の洋服ブランドにて『生地のための 絵の描く職業テキスタイルデザイナー』を知った。
それから大学生の時間は殆どテキスタイルデザインの制作に企てていた。大好きな事で仕事ができる 事が楽しくてたまらなかった。
しかし絵を描く事は一人作業だ。
アイデアを頭が痛くなるまで考え抜き、下絵を10枚20枚、100枚と描き続け、構成が練り終えたら本番 の紙に向かって黙々と手を動かすのみ。中々家からも離れられずに常に話し相手は自分自身。
制作する時間はとても心地の良いものだが、人とのコミュニティ・社会性への介入などといった大切 なものをごっそり奪われる感覚にあう。私が一人で絵を描いている時も友人は仲間と共に仕事をしてい たり遊んでいるのか、妬み・不安・寂しさとずっと関わってきた。
友人とも疎遠になり、ついには制作自体が苦痛なものになってしまい、何度も辞めようと泣きながら 考えていた。
5年間経ち、このままでは社会と断絶してしまうといった恐怖心に煽られ、デザイン会社へ訪問しど のように仕事をしているのかを聴きに行くようになった。
そこであるテキスタイルデザイナーの方から「どんなに辛くても、ひとりぼっちでも10年続けていけ ば得るものがある。それを頼りに10年、また10年続けていくの事が大切なんだ。」と教えていただいた。その方も同じく孤独と戦いながら制作を続けていたそうだ。
その言葉は心と体に重くのしかかり、私は今まで一人で制作していた事がとても大切な事だったと気 づいた。さらに今まで頑張っていた自分自身を蔑ろにしていた事を反省し、私の仕事を誇りに思えるよ うになった。あの時にあのデザイナーと会えた事を心から感謝している。
「10年続けて得るものがある」その言葉を思い出しつつ、あと5年続けた先には何があるのか、その さらに10年どうなるのかワクワクが止まらない。今は一人ぼっちではなく、数人の同じ志の仲間もでき た。私はその仲間達とオリジナルの図案を描き続けていく事で人を喜ばせる仕事を続けていける事が私 の人生であることを願いたい。