【 奨 励 賞 】

「あなたは何のために働きますか?」

3年前、就職採用試験での作文のテーマがこのようなタイトルだったことをふと思い出しました。緊張していたし作文が苦手ということもあって、うまく書くことも出来ずに最後まで書ききれた記憶もないけれど、私は、「お金を稼ぐ為に働く。」と答えました。

人はお金がなければ生きていけません。けっして贅沢をしたい訳じゃないけれど、ふつうに生活をす るだけでもお金はかかります。私が中学生になった頃、両親の不仲が原因で父が家を出ました。それか らは母と兄と暮らしてきましたが、贅沢な暮らしが出来たわけじゃないけれど人並みには暮らしてこら れたのは、もちろん母のおかげもあるけれど兄がとても支えてくれているおかげです。5つ歳の離れた 兄には親のように沢山助けてもらいました。だから私は自分自身が早く自立して、兄に自分の好きなよ うに人生を送って欲しい。と常に思っています。働いてお金を稼ぎ自分1人で生活して行けるように貯 蓄をすることが私の働く理由です。

ですがそれだけを唯一の目的としたくない。と思うようになりました。

入組から3年がたち、初めの頃は自分のこと、新しい仕事を覚えることに精一杯で顔見知りのお客さ まももちろんいない状態でしたが、仕事に少しずつ慣れてきた頃からお客さまと会話も出来るようにな り、来店して下さるお客さまとお話しをするうちに、数人の方が来店時は私の顔を探して話しかけて下 さるようになりました。それだけでも充分嬉しいのですが、入組1、2年目では気づいてもらえなかっ た通勤時の私服の際、道で気づいてもらえるようになりました。支店での職員ではなく、私の顔を覚え て下さったことに心から喜びを感じました。来店して下さった時にはお話しできないようなことや、地 域のお祭りにお誘い頂いたり、私自身のことに興味を持って質問して下さったりすることが増えました。ただ事務的に対応をするのではなく、お客さま目線でお話ししたり、対応していくことで、私の応対や サービスにお客さまが価値を感じていただき、顔を覚えて頂けてるのかなと肌で感じることができます。お客様との会話が増えることが、私のやりがいや喜びにつながっています。

今、あなたは何の為に働きますか?と質問されたら、お金を稼ぐ為に働く。というのは3年前も今も 変わりません。ですが、日々のやりがいや喜びを感じ日常を充実させるために働く。ということは就職 活動をしていた学生時には知ることのできなかった今の私の働く理由です。