【 奨 励 賞 】

【テーマ:仕事をしたり、仕事を探したりして気づいたこと】
私です!いかがでしょうか?
あすなろ会 青 鹿 恭 治 24歳

「あなたのためよ!」とにこやかに発したのは、私が担当しているお客様であった。

私は金融機関に勤めて2年目の若手だ。そして今年の4月から外回りとなり担当地区を持つように なった。まだまだわからないことも多く日々苦戦している。

例年に比べて短い梅雨が明け、気温もかなり高くなって来た7月の初旬、その日は定期預金の増強の 日であった。上乗せの金利を武器にして、作成した交渉リストを元に外訪活動をしていた。上乗せの金 利とは言っても今の時代ではほぼゼロと言っても過言ではない。正直に言って商品性がない。リターン を求めるお客様は多少のリスクは背負っても定期預金を下ろして株式の購入などに切り替える人も増え ている印象を受ける。その日もなかなか成果が得られず苦戦していた。上乗せの金利を謳っても、「そん なこと言っても大して変わらないじゃない?手続きが面倒だからいいわー!」と言われてしまう。私が お客様の立場でも同じことを思うだろう。

どうしたら良いんだ。暑くて疲れるし嫌になって来た...。そんな風に思いながら自転車を漕いでいる と1人のお客様とすれ違った。気が重い状態ではあったが、明るく挨拶をした。お客様は私が挨拶する まではまだ私を気づいていなかったようで少し驚きながらも笑顔で返事をしてくれた。

「暑い中大変ね、お疲れ様!」そのお客様は新しく担当になったばかりの私にも、とても優しくして くださる方だった。すでに私の勤める金融機関で多くのご預金をしてくださっていた。優しいお客様な ので、つい本音がこぼれる。「今日は定期預金を追っているんですけど、なかなか成果が出なくて~。」 するとお客様は「今はどこも金利がないようなものだからね~。私はもうおたくにたくさんあるからダ メね、ごめんね!」と言って笑った。大変だという気持ちをわかってくれているだけでもありがたいと 思った。気持ち切り替えてまた頑張ろう!そう思った時、お客様から「おたくの金利はどれくらいだっ け?」と聞かれる。それに答えるとお客様は「じゃあ〇〇さんよりは少し良いのね!そっちにある分を おたくに変えようかしら。」と言った。「本当ですか!?」思わず声が大きくなった。

そしてなんと翌日にお客様から依頼があり、すぐに定期預金を作っていただいた。

うちの方が金利が良かったとはいえ、対して差はないものだった。

「ありがとうございました!!」とお礼を言うと、

「あなたのためよ!少しでも力になれたなら嬉しいわ!」と言っていただいた。

きっとこのお客様は金利ではなく、私を選んで下さったのだと感じた。

「これか!」そう思った。

地域密着型金融機関の私たちは、担当の自分自身に価値を見出してもらい、選んで頂く。日頃の挨拶 やご訪問を重ね、お客様から、あなたのためにしてあげよう。そう思われるようになれば、いい商品が なくてもやっていただけるだろう。

人間なので、自分に優しくしてくださるお客様に対してはこちらも普段より優しくなれるだろうし、 そのような関係になればお互いの気持ちも良いだろう。

大袈裟に言えば、「商品は私です!いかがでしょうか?」だろうか。

私だから選んで頂く。そんな担当者になりたい。

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