【 奨 励 賞 】

【テーマ:仕事をしたり、仕事を探したりして気づいたこと】
就活ファッションのスタンダード ─リクルートスーツへの疑問
神奈川県 新 井 良 枝 24歳

私が就職活動を通じて常に疑問に思っていたことを、この場をお借りしてエッセイとして書かせてい ただきます。最後までお読みいただければ幸いです。


私は、いわゆる新卒採用として、大学在学中に就職活動を始めました。しかし、日本の就職活動のス テップそのもの自体に元々疑問を感じていたため、本腰を入れていざ就職活動!とはなかなかいきませ んでした。本心では、もっと学問を突き詰めていきたいという気持ちもありながら、「大学を出たら、新 卒で就職」という風潮に乗っかりました。当時の私は、社会全体からその圧力をかけられているように 感じ、その圧力に打ち勝つガッツもない未熟者でした。


就職活動をする上で最も疑問を感じていたのは「リクルートスーツ」です。リクルートスーツを着る 時は、自分自身のあらゆる感情を押し殺し、無になることに努めていました。このリクルートスーツに ついてもっと遡れば、大学の入学式から違和感を覚えていました。日本の入学式は、桜がきれいに咲く 4月に行われるのにもかかわらず、入学式当日、学生は真っ黒なリクルートスーツを着て式に参列する のです。私の常識不足でお恥ずかしい限りですが、入学式当日に白いワンピースを着ていた私は、明ら かに浮いた存在でした。恥ずかしい気持ちと同時に、激しい疑問に襲われました。どうして入学式という晴れの日に、真っ黒なリクルートスーツを皆そろって着るのだろう。後に、それは約3年後にやって くる就職活動に備えるためだと知りました。ますます疑問が脳内を駆けめぐります。どうして大学生活 を始める前から、どこで働くかも、何をしたいかもわからない未来の自分のためにリクルートスーツを 買うのだろう。そんなことを考えていても、就職は決まりません。とにかく、社会の風潮に乗っかるこ とが最優先事項だと、また自分の思考を停止させることにしました。


リクルートスーツを身に着ければ外見が均一化され、見た目で判断されずに、学生本人の個性を見て もらえるという考え方があることも後に知りました。しかし、本当にそうなのでしょうか。多くの企業で は入社後に新入社員向けに「ビジネスマナー研修」の類が頻繁に行われています。私自身も新入社員と して入社後、こういった研修を多く受講しました。仕事をする上で大切な身だしなみ─髪型、服装、メ イク、持ち物─。もしリクルートスーツを着た面接で本当に学生本人の人柄や個性が見抜けているので あれば、改めて一からそういった内容の研修に多くの時間をかける必要があるのでしょうか。「私服で面 接すれば効率がいいのに」と何度も思いました。リクルートスーツを着た学生は、企業説明会から始ま り、その後多くの選考ステップを経て内定に至ります。そして、入社してからも、何度もビジネス研修、 マナー研修といった講習を受けるのです。一旦は心を無にして就職活動を終えた私でしたが、やはり思 考を完全に停止することはできませんでした。入社後、3ヶ月で会社を退職しました。たかが服装、さ れど服装...やはり日本の「会社」という組織体制が肌に合わなかったのだと思います。


「あなたが入社後、業務に従事することを想定し、ふさわしいと思う服装で面接に来てください。」こういった就活ファッションのスタンダードが確立すれば、もっと学生にも企業にも負担の少ない選考が 行えるのではないかと思っています。もちろん、一部のベンチャー企業や、アパレル業界には当てはま らない話だということも心得ているつもりですが、リクルートスーツを着た学生や新入社員を見かける 度に、就活ファッションのスタンダードが変わっていくことに希望を抱いている自分がいます。


この風潮に疑問を抱いた元就活生として、拙いエッセイを寄稿いたします。最後まで読みいただき、ありがとうございました。

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