【 奨 励 賞 】

【テーマ:仕事を通じて、こんな夢をかなえたい】
がんばれる、その理由は。
群馬県 半田 まめたろう 29歳

もうすぐ私は医師になる。

仕事を辞め、予備校に通い、医学部に再入学してから数年が経った。合格を果たすまでは周囲から様々 な意見を頂いたが、現在は幸いなことに皆が応援してくれている。日々の病院実習でも患者さんから激 励の言葉を賜ることが多い。そして、その度にきゅーっと身が引き締まる感じがして、机に向かう時間 も苦でなくなる、と言いたいところだが実際はかなりしんどい時もある。けれども、夢があるから私は 頑張れる。

きっかけはホーキング博士の存在を知ったことだった。ホーキング博士は物理学者として有名だが、 物理学の素養がない私にとって彼の宇宙論は盲腸とさほど変わりはない。重要だったのは、彼が宇宙旅 行という壮大な夢をもつALS患者であったことだ。ALSは筋萎縮性側索硬化症の略であり、日本で は難病に指定されている。神経が変性する原因不明の病で、身体は動かなくなるが終生その知性は保た れる。知性が保たれたまま身体の自由が徐々に奪われていく苦痛は想像を絶する。そんな病をもつ彼が 宇宙旅行という壮大な夢をもっている。それは、とても尊いことのように思えた。日々の仕事で精一杯、 五体満足ながら夢などない私にはとてもまぶしく見えたのだ。そして、さらにALSについて調べてい ると、似たような神経変性疾患がいくつかあることを知った。実際の患者さんが綴ったブログなども拝 見した。患者さんは皆懸命に生きていて、やりたいことだってある。しかし、彼らの夢の実現には周囲 の協力が不可欠だった。それを知った私は、誰かの夢に協力することはなかなか褒められた行為ではな いか、それなりに立派なものではないか、と考えるようになった。自分の仕事が誰かの夢の一助となれ ば...もしそうなれば仕事は私にとっての生きがいになる、そう確信した。

自分の夢をもてない人だってたくさんいる。私もその一人だった。しかし、今は胸を張ってこう言え る。「仕事を通じて誰かの夢を叶えることが、私の夢だ」と。その夢があるから私は頑張れるのである。

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